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災害への対応に重要なこと

2016年6月、都市防災と集団災害医療フォーラム(日本医療資源開発促進機構主催)が東京都内で開かれた。
 

首都災害では多数の死傷者が発生し、軽症、中等症などの患者は何十時間も待たねばならない。日本医療資源開発促進機構の山本保博会長は、大航海時代に最強国として君臨したポルトガルが、1755年のリスボン大地震を契機に、国力が衰退したことに触れ、首都直下地震などを念頭に「日本にとって他人事ではない」と警鐘を鳴らした。
 

地震による津波と火災でリスボン市が壊滅的な被害を受け、ポルトガル国内の政治的混迷を招いたとし、「この種の巨大災害は日本人の勤勉性と忍耐だけでは乗り越えられない」と指摘。都市災害で必要となる医療管理の原則事項として、トリアージや治療、搬送といった「医療支援」と、指揮命令・調整や情報伝達、安全の確認・管理などの「運営」を挙げた。
 

続いて登壇した平田教授は、最大震度7を観測した熊本地震を取り上げ、自身で撮影した避難所や地震による断層の画像と、熊本県が集計した入院を必要としたエコノミークラス症候群の患者数を示しながら、活断層と地震との関係や今後の見通しなどを説明。首都直下地震などによる被害を減らすためには、リジリエンシーの向上に加え、耐震化・出火防止を図ることが重要との見解を示した。
 

消防や警察、医療関係者など、人命を守るそれぞれの職域の責任者が大災害時の対応をシミュレートし、被災を最小限にする対策と必要な備蓄、定期点検を確実に行って備える必要がある。
いつ、どこで発生するかわからないものに資源を投じることに躊躇するのもわかるが、災害が起きてからではもう遅い。「起きる」を前提にしないと防災はできない。

■各自治体の非常食備蓄状況
 

政府も自治体も、大規模災害の時のために最低3日の非常食や水を備蓄するよう奨めている。自治体や避難所では備蓄計画をたて、管理していることであろう。非常に広い地域に甚大な被害が及ぶ可能性のある南海トラフ巨大地震では、「1週間分以上」の備蓄が望ましいとの指摘もある。災害に際し、非常食や飲料水は国民一人一人が準備をするものであることを徹底すべきである。自治体が準備するのは、帰宅困難者や一時避難者、要援護者のみでよいと考える。あとは各企業でどう準備するかである。
 

新潟市の一食分の備蓄には驚いたが、47都道府県と20政令市で、食料3日分を確保するとの目標を定めているのは約3分の1の21自治体にとどまり、他の自治体は2日分以下とするなど備えが不十分なことがわかった。熊本地震では発生から2日間で各自治体の備蓄が底をついた。九州地方の備蓄量はとても低い。

社会保障一体改革は皆保険制度を維持するため

政府の経済財政諮問会議が5月に開いた会合で提示した素案は、消費税率を2017年4月に10%まで引き上げる方向で作成され、同月に向けた環境整備に取り組む方針などが掲げられていた。閣議決定された骨太方針には、そうした文言が削られ、消費税率引き上げを19年10月まで延期してもなお、20年度の財政健全化目標を堅持する考えが盛り込まれた。
 

また、財政健全化目標を達成させるために政府が昨年決定した「経済・財政再生計画」に基づき、医療・介護提供体制の適正化などを着実に進める方針を、素案と同様に掲げた。ただ、文言を付け加え、改革が「世界に冠たる国民皆保険・皆年金を維持し、これを次世代に引き渡すこと」を目指したものだと強調している。 
 

素案では医療提供体制に関して、医師が働く地域や診療科の偏在対策を「規制的手法」も含めて検討することとしていたが、実効性のある対策を検討すると改め、規制的手法についての明示を避けた。
 

一方、健康づくりに関しては、特定健診の受診率アップに関する表現を素案よりも強め、「大幅な向上」を図るとした。
 

また、来年度予算編成の基本的な考え方として、重点的に推進する取り組みを列挙。経済・財政再生計画による社会保障制度の改革の着実な実行や、医療・介護分野などの徹底的な「見える化」などを掲げた。来年度予算編成の考え方は、素案では空欄になっていた。
 

骨太方針には、社会保障関係費の伸びを年5000億円程度とする「目安」が盛り込まれていないが、政府が昨年決定した方針に基づき、来年度予算でも年5000億円程度が「目安」になるとみられている。
消費税率を先延ばしするほどの社会保障費(医療・介護・年金・福祉・保険)を補てんできるものはない。
選挙のために国民を窮地に追い込んではいけない。消費税を9%にでもすべきではなかったのか。社会保障費は伸びる一方で減ることはない。

先送りしても解決にはならない。2年後に国民が潤っている保証はない。

■社会保障費の推移

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成年後見制度ハンドブック作成、日本精神保健福祉士協会

2016年06月02日、日本精神保健福祉士協会は、精神科病院や在宅での成年後見制度の活用例や精神障害者の自己決定支援などを紹介するハンドブックを作成した。

2000年(平成12年)にあらたな成年後見制度が導入された。今日的課題としては、成年後見人等の担い手の不足、親族のみならず専門職後見人による財産の着服などの不祥事、家庭裁判所の監督の不十分さなど、精神障害者をはじめとして判断能力が衰えた人々の権利を擁護し、生活を支援する仕組みであるはずの成年後見制度を悪用する者がいることも事実である。
 

しかしながら高齢社会の到来、地域社会 ・ 家族基盤の脆弱化等社会状況の変化に加え、地域包括ケアの推進、病院 ・ 施設からの地域移行などの政策の変革にとって成年後見制度はそれを支える重要な社会資源といえる。殊に精神科医療の変革を受け、長期に入院していた患者さんたちの地域移行 ・ 地域定着を支える資源の一つとして、また長く親の庇護下にあったものの親の高齢化や死亡により急きょ単身生活をせざるを得なくなった精神障害者の暮らしを支える資源としても、大きな役割を果たすことが期待される。ガイドブックが成年後見制度に関わるすべての人にとって、そのプロセスを支える道標となることを期待する。

■成年後見制度とは

認知症、知的障害、精神障害などにより、判断能力が十分でない人が、不動産や預貯金などの財産管理、介護などのサービスや施設への入所に関する契約締結、遺産分割協議などを、自分で行うことが困難な場合など、また、自分に不利益な契約でも、よく判断ができずに契約を結んでしまい悪質商法の被害にあうおそれもある。このような人の権利、財産を保護し、安心して生活できるよう支援するのが 「成年後見制度」である。  

家庭裁判所に申し立てて、援助する人を選任する。法定後見人が支援する内容は、後見、保佐、補助の3つの類型を法律が定めている。

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中医協診療側委員に看護職員の任命を要望、日看協

2016年6月1日、日本看護協会(日看協、坂本すが会長)は、中央社会保険医療協議会(中医協)委員に関する要望書を厚生労働省に提出した。
 

中医協は、「療養の給付に要する費用の額」(診療報酬点数)や「入院時食事療養費の基準」、「入院時生活療養費の基準」、「保険外併用療養費の基準」、「訪問看護療養費の額」などについて、厚生労働大臣からの諮問に対する答申や建議などを行っている(社会保険医療協議会法第2条第1項)。
 

委員の構成は、同法の第3条第1項で(1)健康保険、船員保険および国民健康保険の保険者ならびに被保険者、事業主および船舶所有者を代表する委員(支払側):7名(2)医師、歯科医師なら薬剤師を代表する委員(診療側):7名(3)公益を代表する委員(公益代表):6名、の合計20名とされている。
 

また同法第3条第3項では、「専門の事項を審議するため必要があると認めるとき」に10名以内の専門委員を置くことが認められており、この専門委員の中には、看護職員の代表が含まれている(2016年6月現在、日本看護協会の菊池令子副会長)。 
 

しかし日看協は、①超高齢社会において医療は「治す」から「治し、支える」に変化している、②看護は医療機関のみならず、介護、訪問看護、行政など幅広い領域で国民を支えている、③看護職は医療従事者の中でもっとも多い(2014年時点で160万3108名)。こうした中で、安全で良質な医療提供に大きく寄与していることを強調し、「医療提供体制改革を推進する政策の1つである『診療報酬』のあり方に看護職の意見を反映させる必要がある」との趣意で、中医協の診療側委員に、看護職員を任命するよう要望した。

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依存というもの

依存症(Addiction)は、ラテン語の「委ねられる」あるいは「(奴隷として)縛り付けられる」という意味の単語「addictus」に由来する。
依存症は、慢性的で再発性のある脳の疾患で、有害な結果を招くにもかかわらず、アルコールを強迫的に求め、使用せずにはいられなくなる点を特徴としている。これが脳の疾患だと考えられるのは、アルコールが脳に変化を起こすからで、アルコールは脳の構造や機能を変えてしまう。このような脳の変化は長く続き、有害な行ないばかりか、多くの場合には自己破壊的な行動につながるおそれがある。またアルコールを解毒する肝臓の障害も起きる。

フィラデルフィア・カレッジ・オブ・オステオパシック・メディシン(Philadelphia College of Osteopathic Medicine)の臨床学准教授Scott Glassmanは、依存症を「快楽を追求し、不快なものを避けようとする心の動き」と説く。

依存するものによって脳内にある報酬系を活性化させ、結果的にドーパミン濃度の急上昇を招き、高揚感をもたらす。しかし、時が経つにつれ、こうした物質に対する耐性が生まれ、以前と同じくらいの報酬を得るためには摂取量を増やさざるを得なくなる。

メカニズムは、人間の脳の「即坐核(別名:快楽中枢)」と呼ばれる、依存的な行動と密接な関係を持つ部位があり、この部位の活動が、人が
何かを強く求める気持ちの強さにつながっている。食べ物やギャンブル、ビデオ、スマホなど、快楽をもたらすものはすべて、この即坐核を活性化し、依存症へと導く可能性がある。

コカインやアンフェタミンといった興奮作用を持つ薬物は、ドーパミン濃度を上昇させ、興奮や覚醒、行動の活発化、気分の高揚などを招く。こうした薬物を繰り返し用いると、脳のこの部分におけるドーパミン放出能力が向上するため、さらにこの薬物が欲しくなる。同時に、即坐核は薬物以外の刺激となるセックスなどの行動に反応しにくくなり、報酬をもたらす行動の見極めに役立つ、より一般的なシグナルが感じにくくなる。その結果、求める薬物を手に入れるために人生の多くの時間を費やすようになっていく。

依存症とは、ある物事に異常なほど執着し、それなしでは我慢できないという状態になってしまう病気で、何かに夢中になり、それをやめようとすると、不安やイライラが募り、いてもたってもいられない状態となる。

依存症の生理学的なメカニズムは完全には解明されていないが、シカゴ、アドラー心理学大学院の臨床心理学准教授Joseph Troianiは、依存に陥りやすい人の要素として、①生理学的要素(出生前の薬物暴露、遺伝的素因、使用された薬物の精神薬物学的な影響、さらには当人の薬物に対する耐性などが関わっている)、②心理学的要素(ストレスや悲嘆、不安、うつ状態、身体的あるいは心理的苦痛はすべて、薬物使用に走る可能性を高める)、③社会的要素(家族やコミュニティー内で薬物が使われている状況を目にしていることや、場合によってはその人の職種も、薬物依存を引き起こす)、④内面の要素(生きがいや希望の喪失、あるいは人生に意味を見いだせないといった状況)を挙げている。

いずれにしても、依存症者の脳内では、バイオバランス(生物が体内の環境を安全な一定の範囲に保とうとする働きで、依存症の場合は、ドーパミンの作用を抑制するセロトニン:興奮を押さえ感情を安定させる神経伝達物質の分泌量が少ないため、普通の人より強く快感を感じてしまう)が正常に機能していない。

人間は誰でも多かれ少なかれ何かに依存して生きている。人に依存する人もいるし、物に依存する人もいる。中には、趣味に依存する人もいる。それを自分でちゃんとコントロールできていれば何の問題もないが、依存しすぎて自分で自分がまともにコントロールできなくなってしまうと依存症となる。

依存症には、①共依存(他人に頼る人と他人に頼られないと不安になる人との間に成立する依存症)、②恋愛依存(恋愛をするとハッピーな気分よりも不安やイライラ、ストレスの方が大きかったり、と自分や相手を傷つけるような行動ばかりとってしまう)、③依存性パーソナリティ障害(過剰に面倒をみてもらいたい(構ってもらいたい)欲求があり、まとわり付く行動を取り、分離することを恐れる)などもある。

◆ドーパミンとは?

ドーパミンは、日常生活で気持ち良いと感じた時に脳内で分泌される神経伝達物質で、人間の行動意欲のほぼ全てを(ちょっと身体を動かす事さえ)司っているとても重要な脳内物質である。

■ドーパミンの生成過程
 

ドーパミンの化学式は、 C8H11NO2である。

ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの三種をまとめてカテコールアミンと呼ぶ。いずれも覚醒物質である。ノルアドレナリンもアドレナリンも交感神経から脳の外に多く分泌されてホルモンとして働く。ドーパミンのみが脳内にとどまる神経伝達物質である。

化学的には、①チロシン→②ドーパ→③ドーパミン→④ノルアドレナリン→⑤アドレナリンで作られる。

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70歳以上の高齢者の自殺者増加

2016年5月31日、自殺白書が閣議決定された。

白書によると、全国の自殺者数(警察庁統計)は、1998年に前年比35%増の3万2863人となった後、11年まで3万人台で推移。12年からは年々減っており、15年は前年比1402人減の2万4025人となり、急増前の水準に戻った。
 

自殺対策基本法制定の翌年の2007年と15年の年間自殺者数に占める性別・年齢別の構成比を比較したところ、男性では50歳代で4.5ポイント減の12.1%と大きく低下した一方、男女とも70歳代と80歳以上で0.8~1.9ポイント増加していた。70歳以上の割合が増えた理由について、白書は「人口に占める構成比が増加したことによるもの」と分析している。
 

このほか、07年以降の健康問題による自殺者数についても分析した。

うつ病や身体の病気を原因・動機として自殺する者の割合は「低下している」との見解を示し、「これらの疾病の患者に対する医療の進歩や相談体制の充実が寄与している可能性が示唆される」としている。

現在までの自殺理由の全体の傾向としては、自殺者の45~50%は健康問題で、次いで約20~25%が経済や生活問題、10~15%は家庭問題である。全体の傾向としては、まだ右肩上がりである。楽観はできない。

09

アルコール依存症に専門医療機関を

依存は、他人や組織、物に愛情や支持、保護、援助を求め、それがなくては生きていけない状態で、行為や思考のコントロール障害といわれている。 自分ではやめられなくなり、精神医学の立場から病気と認められているものを「依存症」という。
 

世界保健機関専門部会の概念では、「精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める抑えがたい欲求である渇望が生じ、その刺激を追い求める行動が優位となり、その刺激がないと不快な精神的、身体的症状を生じる精神的、身体的、行動的な状態」をいう。
 

2016年5月31日、アルコール健康障害対策推進基本計画を閣議決定した。基本計画では、アルコール依存症の生涯経験者(診断基準の該当者・過去の該当者)が100万人を超えるという。健康障害の発症頻度の高い臓器障害として、アルコール性肝疾患がある。アルコール性脂肪肝として発症後、飲酒の継続で肝炎、肝線維症に移行し、アルコール性肝硬変や肝細胞がんへ進行する。
 

こうした状況を踏まえ、2016年度から20年度までの基本計画の期間中に、健康障害に関する予防から相談、治療、回復支援までの切れ目のない支援体制の構築や、飲酒のリスクに関する知識の普及について、重点的に取り組むとしている。特に医療分野の基本的な方向性については、「アルコール健康障害への早期介入を含め、一般医療機関と専門医療機関との連携を推進する」ことが記載されている。また、診療が可能な医療機関が「全国的に不足している」とし、治療拠点となる専門医療機関を整備することを盛り込んでいる。すべての都道府県に、アルコール依存症に対して適切な医療を提供できる専門医療機関を1カ所以上設置することを目標に掲げている。またアルコールによる身体症状に対応できる内科との連携も重要となる。

■アルコールの身体的影響
 

肝臓疾患 :長年の飲酒により肝臓に脂肪がたまる脂肪肝、次に肝炎になり、最後には肝硬変へと進行する。

消化管疾患 :食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらに咽頭がん、食道がん、大腸がんなどの危険のほか、栄養吸収障害を起こす。

心血管系の疾患:飲酒は血圧を上昇させ、高血圧を引き起こす。また、多量の飲酒を続けると、心臓の筋肉が障害を受け、心筋症になる。

脳の疾患:多量の飲酒による血圧上昇による脳卒中。また、アルコール性認知症や小脳変性症を引き起こす。そのほか、中枢神経の機能維持に
必要なビタミンの吸収障害から、ウエルニッケ脳症、コルサコフ症候群を引き起こす。

その他の疾患:肥満や中性脂肪上昇、痛風、糖尿病、栄養吸収障害、貧血、女性特有の問題として、生理周期の異常、妊娠出産の異常。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のメリット・デメリット

サ高住は、民間事業者などによって運営され、都道府県単位で認可・登録された賃貸住宅である。住宅の特長は、構造上一般的な賃貸住宅よりも高齢者が住みやすく、賃貸借方式で契約する施設が多いので、多額の入居金を必要としないため借りやすい。また、「入居者の居住の権利」が確保され、不在になっても契約を解消しない限りは住居が確保される。また、入居時に支払う敷金は、原状回復等に必要な額を差し引いて退去時に返還される。

■メリット

1.高齢者が契約しやすい賃貸住宅である

2.高齢者が生活しやすい(バリアフリーなど)設備が整っている

3.サ高住の新規参入が多く、選択肢が豊富である

4.介護認定のない自立した高齢者も入居できる

5.自宅同様、自由な生活を継続できるところが多い

6.住み慣れた地域で暮らせる

■デメリット

1.一般的な賃貸住宅に比べ家賃が高い(地域による)

2.連帯保証人を求められる

3.重度の介護状態では、基本的に住み続けられない

4.介護は訪問介護サービスを利用する

5.施設によって提供されるサービスに差がある

看護師の実践能力指標、日看協が作成

日本看護協会(日看協)は、看護師の実践能力を段階的に表し、その到達度を示した「看護師のクリニカルラダー」を作成した。
 

看護師が働く職場は、病院だけでなく、高齢者介護施設や訪問看護ステーションなど多様な場で働くことが広がりつつあり、「あらゆる施設や場で働く全ての看護師に必要な核となる看護実践能力」が求められる。こうした状況を踏まえ、日看協では、働く環境にとらわれずに使うことができる能力開発・評価システムが必要と判断し、看護管理者や専門看護師、病院内の教育担当者、大学教員らで構成するワーキンググループを編成。臨床実践現場で必要な能力を抽出して、実践例などを作成した。
 

看護実践能力を構成する項目として、①ニーズをとらえる力、②ケアする力、③協働する力、④意思決定を支える力、の4つを示し、各項目をレベルに応じて5段階に分け、能力を評価する指標としている。
 

例えば「ケアする力」の項目では、レベル1:「助言を得ながら、安全な看護を実践する」からレベル5:「最新の知見を取り入れた創造的な看護を実践する」までのレベルごとの目標を提示。
 

病院と高齢者介護施設、訪問看護ステーションでも、それぞれのレベルに応じた目標を記載。多職種連携に必要な「協働する力」の項目では、「介護・福祉分野の職種とのお互いを尊重した働き方を理解する」や「入院時から、退院後の生活場所について、多職種に提案する等の調整を行う」といったことが挙げてある。

各施設が活用して看護能力の標準化、質の担保につなげることを期待したい。

■クリニカルラダー目標(見本)

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病院勤務医の地域偏在拡大

日本病院会(日病)の「地域医療委員会」が2015年10月1日~11月20日に、日病の会員2431病院を対象にアンケート調査を実施し、664病院から回答を得た。その結果、政令指定都市や中核市などの「都市部」が323病院で最も多く、「その他の市」は301病院、「郡部・町村」は40病院。病床規模別では、300床未満の病院が半数超を占め、6割近くが一般病棟7対1入院基本料を算定している。
「5年前と比較して常勤医が増加したか」との質問では、「増加した」が55%に上り、前回調査から3ポイント微増した。だが、これを所在地別で見ると、都市部は65%(前回比9ポイント増)だったのに対し、その他の市は48%(同1ポイント減)、郡部・町村は28%(同18ポイント減)で、人口が少ない地域ほど下がる傾向が見られた。
 

一方、「減少した」と回答した病院は、都市部では11%(同6ポイント減)と減少したものの、その他の市が30%(同5ポイント増)、郡部・町村が43%(同25ポイント増)だった。
 

勤務医不足を解消させるため、どのような政策を支持するか(複数回答)、では、「総合診療医の育成」が全体の80%に上り、次いで「地域枠入学の活用」(73%)、「医師の計画配置」(70%)などであった。
 

医師の偏在解消に向け、さまざまな施策が行われてきたが、勤務医の偏在は解消どころか拡大している。地域枠に関しては、「義務年限や赴任病院など、大学によって運用ルールが異なるので基準をある程度統一したほうがよい。

■医師の地域枠とは

へき地の医師不足を解消するための処置で、大学医学部により、都道府県内出身の受験生に対するものと、地元以外の出身受験生に対するものがある。

医学部への地域枠入試のおもな資格や要件としては、①受験生の出身地が各大学の定める地域にあること(定めない場合もある)、②受験生の高校時などの学力が、各大学が定める条件をクリアしていること、③合格した場合、入学を確約できること、④医師国家試験に合格した後、大学が指定する研修病院で卒後臨床研修を受け、その後も一定期間(おおむね卒後臨床研修[前期・後期で合計4年間]+その後5年間の計9年間)、大学や各都道府県が指定する医療機関で医師として働くこと、などがある。

なお、各都道府県から合格した学生に対し、入学金や学費、さらには生活費などといった「修学資金」を大学在学中(6年間)に貸与する場合もある。その際、4の条件をクリアすれば修学資金の返還は免除されることもある。