月別アーカイブ: 2016年12月

救急隊の蘇生中止、学会が基準作り

末期がんなどで心肺が止まった患者を救急隊員が運ぶ際、人工呼吸などの蘇生処置を家族らが望まない場合の対応について、日本臨床救急医学会は、統一的な基準作りを始めた。  主治医の指示が確認できれば処置を中止する方向で検討し、年内にもまとめる方針。

岐阜、広島、長崎、大分の4県では、主治医に確認した上で蘇生処置をやめることをルール化していた。4県のルールは、隊員が患者らの意思と、職責との板挟みになって困らずに、意思に沿えるようにすることが狙い。救急隊の対応を助言・指導するために自治体が設ける「メディカルコントロール(MC)協議会」が2003年以降に作った。
 

また、埼玉県や千葉県の一部地域でも、同様のルールを設けていた。一方、沖縄県では、家族らが中止を希望しても必ず蘇生処置することを明確にしていた。
 

救急業務の法律問題に詳しい橋本雄太郎・杏林大教授(医事法)は「現状では、救急隊には応急処置が求められており、家族の範囲も法的にあいまい。隊員にとっては処置を続ける方が後でトラブルになりにくい」と指摘する。
 

総務省消防庁の基準は、生命に危険がある場合、隊員に応急処置を求めている。蘇生を望まないのに、家族らが救急車を呼ぶ背景には、死の迎え方について事前の意思表示が広がる一方、自宅や高齢者施設でみとる態勢が不十分なことがある。容体が急変した時に主治医と連絡が取れなかったり、慌てたりして119番通報につながっている。
 

こうした状況を受け、日本臨床救急医学会は統一された基準を作るための委員会を設置。救急隊からの連絡で中止を的確に指示できるよう、本人や主治医が事前に意思表示する書面のひな型を作ることも検討している。
 

委員長の丸川征四郎・医誠会病院名誉院長は「医師の判断と合わせ、現場で患者や家族の希望に応えられる仕組みが大切」と話す。
 

本人や家族が蘇生処置を望んでいない時の対応について、朝日新聞が47都道府県の担当者に聞いたところ、36都道府県が「国による統一のルールが必要」と回答。
 

■蘇生処置
 

救急隊員は通常、心肺停止の人に心臓マッサージや人工呼吸をするほか、状況に応じて電気ショックなどを使う。救急救命士は医師の指示で、救命効果の高い気管挿管や薬を使うこともできる。

全国の国立病院のデータ集積基盤が完成、診療情報を一元化

2016年4月13日、日立製作所は、国立病院機構の「国立病院機構診療情報集積基盤」」(NCDA)のデータ集積基盤を構築したと発表した。
 

NCDAは、国立病院機構が全国で運営する143の病院の電子カルテシステムなどが持つ診療情報を一元的に収集・蓄積する基盤。国立病院機構は膨大かつ複雑な診療情報を効率的に分析・可視化することで、医療の質の向上や病院の経営効率改善に役立たせたい考え。
 

国立病院機構では電子カルテなどの形式で蓄積された診療情報を分析しているが、病院ごとにさまざまな種類の電子カルテシステムがあり、データの互換性の問題などから、データを統合的に分析することは困難だった。また、全ての病院に同種の電子カルテシステムを導入するには、運用面やコスト面で課題があった。
 

日立が構築したデータ集積基盤は、さまざまな種類の電子カルテシステムに蓄積された診療情報を一元的に収集・蓄積できる。国立病院機構が運営する各病院で個別に作成された電子カルテのデータを診療情報の標準的な仕様であるSS-MIX2形式で収集し、別途蓄積されたDPCデータやレセプトデータも統合してデータベース化する。
 

DPCデータは、急性期の入院医療を対象として、患者の入退院日、傷病名、治療方法などの診療実績を記録したデータ。レセプトデータは、医療機関を受診した際に発行される診療内容や請求額などが記載されている診療報酬明細書を電子化したものとなる。
 

このデータ集積基盤を活用することで、各病院で使用する電子カルテシステムを変更することなく、膨大かつ複雑な医療情報を安全かつ効率的に分析、可視化できる。NCDAは患者の重要な個人情報を取り扱うため、堅牢なセキュリティ対策を行った上で運用されるとしている。

E型肝炎が昨年上回るペースで増加

ウイルスに汚染されたイノシシやシカの肉などを摂取して急性のE型肝炎を起こす患者が、2015年に過去最多を記録した。2016年は、その報告数を上回るペースで増えている。国立感染症研究所がまとめた今年の患者報告数(4月3日時点)は昨年同期の2.3倍で、北海道と首都圏からの報告が全体の約6割を占めている。患者が増加傾向の自治体では、食肉の十分な加熱や、生肉に触れるはしと食べるために使うはしを分けることを呼び掛けている。
 

E型肝炎はウイルス性の急性肝炎で、ウイルスに汚染された食物や水を摂取することで感染する。15~50日の潜伏期間の後、腹痛や食欲不振といった消化器症状を伴う急性肝炎を発症する。
 

国立感染症研究所によると、今年の患者報告数は106人で、昨年同期よりも59人多い。都道府県別では、北海道が26人で最も多く、以下は東京(14人)、神奈川(9人)、埼玉(8人)、千葉(6人)、青森と大阪(共に4人)などの順である。
 

E型肝炎の集団発生も起きている。北海道旭川保健所管内の介護施設で、2月から3月にかけてE型肝炎の集団発生が起き、入所者9人の感染が確認され、保健所が施設に対し、衛生管理の徹底を指導した。
 

同保健所管内では、昨年の患者報告は1人だったが、今年はすでに15人の患者が報告されている。こうした状況などを踏まえ、旭川市はホームページで、シカやイノシシなどの生肉を食べないといった注意事項を掲載。加熱調理の際は中心部まで火が通るように十分加熱することや、生肉に触れたはしや皿などは、食べるために使うものと分けるよう求めている。

厚生労働省は、イノシシやシカなどの肉や内臓を生で食べてE型肝炎ウイルスに感染して死亡したり、重症となったりした事例があったことを挙げ、「野生鳥獣はどのような病原体を保有しているか分からない。地域によらず、生で食べるのは危険」と注意を促している。
 

国内での感染だけでなく、海外で感染する「輸入症例」も報告されている。国立感染症研究所などによると、食欲低下や胃痛などの症状があった20歳代の女性が帰国後に入院した際、血液からE型肝炎ウイルスを検出。この女性は、昨年8月以降にインドやアフリカなどを訪問していた。発展途上国で最もまん延している遺伝子型であったが、感染国は特定できなかったという。

葬儀難民、遺体ホテルも出現

「ご葬儀まで、1週間以上お待たせすることになります」。東京都内の斎場職員はそう話す。

いま、葬儀が希望の時間にできないために、何日も待たされる“葬儀難民”が増えている。都内の葬儀会社アーバンフューネスによれば、昼の時間帯に告別式・火葬を望む場合、斎場が1週間以上先まで埋まっていてすぐに葬式が出せないケースが増えているという。

厚生労働省によると、現在、1年間の死亡者数は約130万人。団塊の世代が80歳代を迎える2030年には160万人に達するとされる。世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本は、未体験の“多死社会”へと向かっている。

東京では、火葬場や斎場がかつてないほど混み合っている。東京都福祉保健局によると、都内の年間死亡者数は約11万人。毎日平均300人以上が亡くなっている計算だが、都内の火葬場は26カ所(うち8カ所は島しょ部)。保冷庫はつねに遺体で満杯だ。葬儀会社グランドセレモニー代表の佐藤隆博さんによれば、高齢者の体力が低下する冬場、とくに年末年始を挟んだ12月、1月の混雑が著しいという。八王子市斎場の受付職員は「繁忙期はご遺族のご希望の時間帯に添えないことも多く、なかには火葬まで7日もお待たせするケースもあります」と話す。

火葬場不足の背景には、新たな火葬場建設が難しいという事情がある。火葬場建設計画が持ち上がっても、土地のイメージが悪くなるとして地元住民が反対するケースが多い。

人口59万人を抱える埼玉県川口市には公営の火葬場がない。火葬場建設をめぐる住民の反対運動が根強かったためだ。結局、自然公園と高速道路のパーキングエリアに火葬場が併設されるという異例の決定がなされ、現在建設工事が進められている(2018年稼働予定)。宮城県岩沼市は火葬場の老朽化を踏まえて移転先の候補地を公募した。2013年、応募があった市内4か所から候補地を選んだが、住民の一部が反発。訴訟にまで発展し、新火葬場計画は白紙となった。その後、新たな候補地を選定し、2016年度の予算に火葬場建設費が盛り込まれた。

「早朝」「友引」もフル稼働する火葬場。

火葬場が増設しにくい状況のなかで、各自治体が講じているのが「受け入れ時間の延長」だ。東京都の南多摩斎場は午前中の火葬を引き受けることで1日の火葬数を17件から27件まで増やした。八王子市斎場では年末年始や一般的には葬儀が避けられる「友引」の火葬を引き受けることも行っている。

大阪市では、現在10時から4時までとしている火葬を前後に数時間ずつ延ばすことが検討されている。さらに現在は火葬後、炉の前でお骨を拾うのが一般的だが、別の場所に移してお骨を拾うことで、炉の回転率を向上させるという。

混み合う火葬場の順番待ちをしている間、遺体はどこに安置しておけばいいのか? 遺族にとっては切実な問題(ニーズ)に目をつけた新しいビジネスが「遺体ホテル」。すでに首都圏、大阪などに出現している。

大阪北区の「ホテル・リレーション」は、2012年に開業。築30年のホテルをリニューアルした。これからやってくる多死社会を見据えてこの業界に参入したという。今後、葬儀難民が間違いなく増える。需要も多いと思われる。

一方で、多死社会を前に、自分の遺体を大学医学部の解剖実習のために提供する「献体」の登録者数が増えている。篤志解剖全国連合会(東京、87大学加盟)によると、現在の登録者数は26万人を超え、30年前の4倍になった。1985年当時、解剖実習に使われていた遺体はその半数が警察から提供される身元不明遺体だったが、現在はほぼ100%が献体だという。

献体希望者は生前、医科や歯科大学に登録しておく。その際、2人以上の肉親の同意が必要となる。登録者が死亡すると遺体は大学へ運ばれ、防腐処理に3〜6か月、解剖学実習に3〜7か月が費やされる。すべてが終わると火葬され、遺骨は遺族へと返還されるというのが一般的な流れである。遺体運搬や火葬の費用は大学側の負担で、遺骨を大学の納骨堂に納めることも可能だ。

引っ越しそばってどんなこと?

3月~4月にかけて、特に覆いのが「引っ越し」。看護師も類に漏れない。引っ越しにつきものが「引っ越しそば」。引っ越しそばについて調査をした結果がある。

株式会社マクロミル(インターネットリサーチの事業をプロモーション・メディア領域などで行うマーケティングビジネスカンパニー)が、2016年2月9日(火)~12日(金)に全国、18~59歳の男女(マクロミル提携モニタ)の年代(10,20,30,40,50代)を均等にインターネットで回収(1696サンプル)の結果である。

調査の結果、「引っ越しそば」の風習を正しく理解している(引っ越し先で近隣の人にそばを振る舞う)のはたったの27%で、約半数の49%が「引っ越し先でそばを食べる」と誤解、23%はそもそも「知らない」という結果になった。ただし、「引っ越しの挨拶」について「する派」は75%にのぼり、挨拶文化自体、現代も残っていた。
 

「引越しそば」が行われるようになったのは江戸時代中期で、江戸を中心に始まった。

引越し先に荷物を運んだら、家主と向こう3軒両隣(自分の両隣2軒と向かい側3軒の5軒)に引越しのあいさつとして二八蕎麦を配っていた。蕎麦を配るようになる前にも物を送る慣わしはあったようで、そのときは小豆粥やお餅などを配ったりしていたようだ。ただ、当時小豆は決して安くはなかったのでバカ丁寧すぎるんじゃないか?と蕎麦を送るようになったようだ。配る量は普通、家主、管理人(差配)に二八蕎麦5つ、隣近所には二八蕎麦を2つ配っていた。
蕎麦を配るようになった経緯には江戸っ子の洒落っ気もあったようで、そば(近く)に越して来た事にかけて「おそばに末永く」や「細く長くお付き合いを宜しく」といった具合に 蕎麦とそば(近く)をかけて配るようになった。

引っ越しに蕎麦を配るようになった1番の理由は蕎麦が1番手軽で安上がりだった事のようだ。

現在多くの人は、隣近所にはタオルや菓子詰めを送りそばは手伝ってくれた人や自分達が食べるように変わってきている。

日持ちの問題やアレルギーの問題など蕎麦を贈るにはちょっと躊躇することもあるが、江戸時代に習って蕎麦を贈るのもまた乙なものである。

精神疾患連携事業、国立病院機構に活用促す

精神病床に入院中の難治性精神疾患の患者は入院が長期化しやすい傾向があるが、治療抵抗性統合失調症治療薬などを使った専門的な治療で、「地域生活へ移行する例も少なくない」(厚労省)という。ただ、専門的な治療を行う際、単科の精神科病院では副作用などの緊急事態に対応できないといった課題があり、厚労省は2014年度から都道府県と指定都市を事業主体とする難治性精神疾患の地域連携モデル事業を展開してきた。

今回の実施要綱の改正では、国立病院機構などの独立行政法人を事業主体に追加することを盛り込んでおり、連携体制の拡充につなげるとしている。
 

支援対象者は、精神病床に入院中で従来の治療では効果が乏しく、治療抵抗性統合失調症治療薬などによる専門的治療が必要な難治性患者で、1つのネットワークは、精神科病院と血液内科や麻酔科などがある医療機関の6施設ほどで構成する。

事業主体の都道府県などが開催する連携会議には、ネットワークを構成する病院の医師や看護師、精神保健福祉士などが参加するとしている。

転院搬送に甘い厚労省と消防庁

いったん医療機関に収容された患者の症状悪化や専門的な処置が必要となった場合、他の医療機関に搬送するために救急車が出動する「転院搬送」について、厚生労働省と総務省消防庁は都道府県に対し、地域の実情に合わせてルール化することを求める通知を出した。

転院搬送をめぐっては、救急出動件数が増えた消防本部のうち、4割超の消防本部が「転院搬送の増加」を要因に挙げていることが、消防庁がまとめた2015年の救急出動件数などの速報値で判明している。同庁の検討会がまとめた報告書でも、厚労省と消防庁が転院搬送のガイドラインを作成し、それを参考にして消防や医師会、医療機関がルール化する必要性を挙げていた。
 

今回の通知では、消防機関が救急業務として行う転院搬送の条件やルール化の項目を提示。転院搬送の条件については、緊急に処置が必要な場合や、高度な医療や専門医療が必要な傷病者であることなどを挙げている。
 

こうした「原則」を踏まえ、①要請元の医療機関が、あらかじめ転院する医療機関を決定し、受け入れの了解を得ておく、②要請元医療機関の医師または看護師が同乗する、③要請元医療機関が消防機関に転院の理由などを示した転院搬送依頼書を提出する-の3項目を「地域の実情に応じ、関係者間で検討し、合意の上でルール化しておくことが望ましい」としている。

上記ルールの①と②は、今までも行われてきたことで、③については文書ではなく口頭で伝えていたものを文書化するようにしたものである。特別に目新しい解決策にはなっていない。私の考えでは、要請医療機関なり、転院先医療機関がドクターカーでも出動させて診療点数に反映させた方がよほど解決策としては実効性が高いものとなるのではないか。
 

救急車出動件数の増加と搬送時間の延長解消には、こうしたことや軽症者の救急搬送を減少させる対策が必要である。本当に救急搬送が必要な人への影響を第一義に考えていく必要がある。

急性脳炎の報告数、昨年同期の2倍近くに

ウイルスなどが原因で発症する「急性脳炎(脳症)」の患者数が昨年同期の2倍近くになっていることが、国立感染症研究所のまとめた患者報告で分かった。特にインフルエンザウイルスに関連した脳症の報告が目立っており、同研究所によると、今シーズン(8月末以降)は過去3シーズンと比べて15歳未満の割合が高いといった特徴が見られるという。
 

急性脳炎は、さまざまな病原体による脳組織の炎症に起因する疾患群の総称で、インフルエンザなどの先行感染を伴い、高熱に続き、意識障害やけいれんが突然現れ、それが持続する。中には発熱以外に症状がないまま急激に進行し、原因の究明が難しいケースもある。
 

同研究所がまとめた今年の急性脳炎の報告数(3月20日時点)は253例で、昨年同期(139例)よりも114例多かった。都道府県別では、東京が37例で最も多く、以下は埼玉と大阪(共に18例)、愛知(16例)、千葉と福岡(共に15例)、神奈川(13例)、北海道と兵庫(共に12例)などの順だった。
 

同研究所によると、急性脳炎の報告のうち、インフルエンザウイルスに関連した15歳未満の急性脳症(インフルエンザ脳症)が3月6日時点で138例あった。昨シーズン(64例)の2倍以上で、100例を超えたのは、新型インフルエンザ(AH1pdm09)が流行した2009年から10年にかけてのシーズン(276例)以来という。
 

また、インフルエンザ脳症に占める15歳未満の割合は85.7%となっており、過去3シーズン(60.9-71.1%)と比較して「高い特徴が見られた」としている。
インフルエンザ脳症の発生が続いている。国立感染症研究所が3月28日発表した感染症週報(2016年第10週)によると、新たに15例が報告され、今シーズン累計で176例となった。死亡も3人増え、計7人となった。
 

感染症週報によると、3月13日までの1週間に報告のあった急性脳炎は12例で、うちインフルエンザ脳症は7例だった。10歳代の死亡例が1例あった。
 

また、2016年第9週までに診断されたものの報告が遅れていた症例の中に、急性脳炎は13例あった。このうちインフルエンザ脳症は8例で、50歳代の死亡例が2例あった。
 

結局、第10週に報告されたインフルエンザ脳症は15例で、死亡は3例だった(図1)。死亡例のうち、10歳代はインフルエンザB型で、50歳代の2例はA型とB型だった。これまで報告のあった死亡4例は全てA型だったが、ここにきてB型の死亡例も出始めている。
 

重症化の1つの指標となるインフルエンザ脳症が例年になく多くなっている点については、インフルエンザワクチンの接種率が下がったことが原因ではとの見方も出ている。インフルエンザ脳症の多発とワクチン接種率の関連性については今後、検証が必要となる。

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図1 インフルエンザ脳症の報告数の推移(発表週ベース、発表遅れを含む)

改正福祉法の公布

2016年3月31日、介護人材確保の強化策などを盛り込んだ社会福祉法等の一部を改正する法律(改正社会福祉法)が、衆院本会議で自民、民進、公明3党などの賛成多数で可決、成立し公布された。

離職した介護福祉士らを登録するデータベースをつくり再就職を後押しすることや、議決機関としての評議員会の設置の義務化、財務諸表や現況報告書、役員報酬基準の公表に関する規定の整備など、運営の透明性の向上や経営組織のガバナンスの強化のための改正内容が盛り込まれ、社会福祉法人の運営の透明性向上や財務規律の強化などを目指している。一定規模の法人には、会計監査人による監査も義務付けている。
 

また、純資産から事業継続に必要な財産を差し引いた「社会福祉充実残額(再投下財産額)」を明確にすることや、「社会福祉充実残額」があった場合は、社会福祉事業や公益事業の新規実施や拡充に充てることが社会福祉法人の義務として位置付けられた。
 

介護福祉士の資格取得方法の見直しも盛り込まれ、大学や専門学校などに通って資格を目指す「養成施設ルート」の卒業生に対しても、国家試験の受験が義務化され、完全義務化への移行期間は2017年度から5年間とした。改正社会福祉法は3月31日に公布され、介護福祉士の資格取得方法に関する改正については即日施行された。それ以外の改正については、16年4月1日と17年4月1日に分けての施行となる。

看護職員の離職防止のカギ

厚生労働省は、研修の実施状況の調査を行い、認知症看護や感染管理などの認定看護師の「出前講座」や「病院派遣」といった地域の実情に応じた看護職員研修を企画してもらうように、研修モデルをまとめた事例集を作成した。新人看護師の離職防止研修やキャリア支援に加え、医療依存度の高い在宅療養者への看護能力育成も盛り込まれている。
 

事例集では、へき地や中小病院などの「研修の実施が困難な施設への支援」と新人から中堅までの「離職防止・キャリアアップ」、「地域連携・人材交流」の3つのカテゴリーに焦点を当て、神奈川や京都、大分など8府県の取り組みを紹介している。
 

若手看護師の確保が課題となっている石川県の能登北部地域の事例では、地域の教育体制を重点的に支援し、資質の向上と定着の促進を支援することを「取り組みのポイント」として提示。その理由として、新卒の看護師の確保が困難となっている一方、50歳以上が全体の約4割を占めることを挙げ、「今後、より一層の看護師確保が必要」としている。
 

また、2007年度から能登北部地域の公立4病院に勤務しようとする学生を対象にした特別枠を設け、10年度からは修学資金の貸与額の増額などを図っていることに触れ、「今後、就学義務年限(2-4年程度)を終える看護師が順次生じることから、定着・離職防止対策が重要」と説明。こうした状況から、13年度から若手看護師のモチベーションを向上させるための「オーダーメイド研修」を行っている。
 

15年度は金沢大附属病院で7月と9月にそれぞれ4日間、希望の研修分野に応じた病棟に分かれて臨床実務研修を実施。例えば、整形外科領域の周手術期看護を学びたい場合、整形外科病棟や手術室で研修を受けられる。また、AHA(アメリカ心臓協会)の一次救命処置教育訓練プログラム「BLSヘルスケアプロバイダー」の資格取得研修も行われ、認定証が交付されるという。
 

看護協会と連携して中小病院を支援する「認定看護師出前講座」を実施している福井県の事例も取り上げている。同県は14年度から県看護協会に事業を委託し、認知症看護や感染管理、摂食・嚥下障害などの分野の認定看護師を中小病院に派遣。集合研修を行うことが困難な病院に勤務する看護職員でも、専門的な研修を受けることが可能になったとしている。
 

このほか、新人から中堅までの看護職員の離職防止やキャリアアップを目的にした神奈川県の取り組みも掲載。結婚や出産、子育てを経験し
た「先輩看護師」などを講師に招き、受講者に将来像のイメージ化を促し、就業継続への意欲を高めているという。
 

地域包括ケアシステムを中心とする在宅医療などの推進を踏まえ、“連携に強い看護師”を養成する京都府の事業も紹介。事業の運営拠点となった京都大医学部附属病院に昨年7月、「看護職キャリアパス支援センター」を設置し、急性期医療を担う病院と回復期リハビリテーションセンター、訪問看護ステーションなどとの間で、“在籍出向”による相互人事交流の支援を始めたという。
 

こうした各地の取り組みについて、厚労省は「研修を受けた質の高い看護職員の活躍によって、それぞれの課題の解決が期待できる」としている。
 

ずいぶん以前からこのような研修を行って離職防止につなげてきたが、唯一の離職防止は「働きやすい職場・楽しい職場」である。看護師が存在感を感じられるような充実した状況を確立することにある。そのための研修でなければならない。