月別アーカイブ: 2016年2月

地域間競争で医療費抑制

都道府県は、2016年度以降、医療費の抑制策を盛り込む、「適正化計画」を作成しなければならない。
 

人口あたりの病院のベッド数や必要以上の病院受診患者が多いと医療費の増加につながる。一方、後発薬品の使用や糖尿病の重症化予防の取り組みは医療費削減につながる。

こうしたことから、厚生労働省は、都道府県別のメタボ健診受診率や一人あたりの医療費、病院ベッド数、後発薬品の使用割合、医療機関の重複受診、薬の重複投与、生活習慣病の重症化予防の取り組み状況などを都道府県に発信し、他の地域の取り組み状況を知ることで競争心が煽られ医療費削減につながることを期待している。

■メタボの判断基準

03

■2012年都道府県別メタボ健診実施率(降順)

04

院内での自殺対応

疾病を悲観して、また、うつ病による無能感などにより、病院内での自殺は、時折発生する。

私も38年間の看護師生活の中で、病院建物からの飛び降り、縊首、外出中の電車への飛び込み、高層ビルからの飛び降りなど十数件を経験している。

院内で患者が自殺した際、その時の担当看護師のショックの大きさは計り知れない。罪悪感さえ抱いている。予防できなかったのかその原因を追究するのは当然のことであるが、自殺した患者の担当スタッフや自殺を目の当たりにしたスタッフに対して、心理的なケアが必要である。

洗面器に水を汲んで顔を浸けて溺死する事例も、ベッド柵の両端にひもをピーンと張り、高さわずか1mほどでの縊首もある。人工呼吸器のアラームをオフにし、気管チューブとの接続部を外したり、微量の輸注ポンプの速度を速めたり、自殺方法は多様で予防は極めて難しい。

自殺が発生すると、24時間、患者のベッドサイドに寄り添う看護師にとっては大きな責任を感じる時間となる。多職種が連携して、情報を共有しながら、自殺徴候を見逃さないようにする教育やそうした患者への対応についての教育を行い、患者の自殺予防の実現に向ける必要がある。

国立精神・神経医療研究センターの自殺予防総合対策センター(CSP:2006年に設立され、自殺対策の業務を支援する)の業務の在り方について議論してきた厚生労働省の検討チームは、今後、精神保健的な視点に加え、社会学や経済学、応用統計学などの調査研究を推進することや、自殺のリスクアセスメントやリスクマネジメントの手法の開発、地域ニーズの把握と分析、政策決定支援については、国の自殺対策白書の作成に関して、エビデンスなどの知見を提供すること、また、都道府県や地域自殺対策推進センター(仮称)との連携強化に加え、自殺未遂者・遺族支援等推進室(仮称)を設置し、自殺未遂者や遺族支援の取り組みを強化するよう求めている。検討結果に期待したい。

 ■自殺者数の推移

02

地域における認知症の多職種連携は可能か

2014年11月、公益法人未来工学研究所が全国の1741か所の市区町村に対し、認知症対策に関するアンケート調査を行った結果(847か所の有効回答)、認知症対策のための多職種連携を進める上で、課題や問題点と感じることを複数回答で尋ねた質問では、69%の自治体が「地域での認知症対策に関する包括的施策体系ができていない」と回答した。次いで多かったのは「認知症に対する医師の理解が十分でない」(53%)で、施策を実施できるだけの“基盤”が地域にないことや、医師の認知症への理解の不十分さが多職種連携を妨げていると考える自治体が半数を超えていた。また、「個別の認知症高齢者に関する情報共有が不十分」(52%)や「多職種にまたがる調整機関、コーディネーターがいない」(49%)なども多かった。一方、連携モデルや成功事例が知られていないことが課題と考える自治体は10%、患者の抱え込みや取り合いなど、事業者間の競合を課題とみなす自治体は6%にとどまった。また、地域における認知症対策の課題を複数回答で尋ねた質問では、84%の自治体が「医療と福祉を含む包括的な地域連携」と回答した。次いで多かったのは、「多様な認知症支援人材の育成と連携」(69%)だった。認知症の専門医や専門医療機関が少ないことを課題とした自治体も65%あった。

デング熱の専門医療機関

日本感染症学会は、デング熱などの蚊媒介感染症の外来受診や相談への対応を行う専門医療機関のリストを公開した。デング熱をめぐっては、昨年夏に約70年ぶりに国内感染の患者が発生し、東京都内を中心に約160人の患者が報告されており、国内発生に対する予防対策や診療体制の整備の必要性が指摘されていた。こうした状況を踏まえ、同学会は、蚊媒介感染症が疑われる患者の診断や治療を円滑に実施するため、専門医療機関のネットワークを構築し、そのリストを公開した。リストには、青森と山梨、和歌山の3県を除く44都道府県の専門医療機関を明記し、特記事項に「軽症者のみ対応」や「重症のみ受け入れ」、「重症は他院に搬送予定」といった記載もしている。

同学会は今後、患者が最初に受診する一次医療機関で、国内発生のデング熱の疑い患者を診察する機会が増えると予想している。今後、「一次医療機関が専門医療機関に、患者の受け入れ等について相談する体制が必要」としている。

空きベッドの利用

日本慢性期医療協会(日慢協)の構想は、が次のような案を示している。

2014年度の診療報酬改定は、急性期病院にとって非常に厳しかったが、今後は慢性期病院においても厳しくなってくると思われる。さらに、地域医療構想(都道府県単位で必要な医療や病床数・医療従事者数などを見出し医療計画を立てる)に関連して、今後は、30万床ほどのベッドが空いてくる。そのベッドをうまく利用することができないか、ということを考えていかなければならない。たとえばSNW(Skilled Nursing Ward:病院の空きベッドを利用し、病棟単位・病室単位で特定行為をマスターした看護師が管理し、医師が居なくても施設として利用する)が考えられているが、特定行為ができる看護師の研修受講には年月や研修資金が必要だ。またプロトコールの作成も必要となる。研修施設や学校も限られている。仮に看護師対患者が40:1であったとしても休憩時間も必要である。また夜勤もある。各勤務帯2名で体制を組んでも一日6名が必要で、この人数で月の夜勤回数を割り出すと平均20日となる。6名の休暇が必要である。週休2日だと6名では運営困難なことが分かる。また施設のニーズに応じた人員が配置できるほどの特定行為ができる看護師を育成することは、残念ながら50年後でも実現が不可能である。ほかの利用方法を検討した方がよい。

医療看護必要度のB項目、7項目に見直しか

「重症度、医療・看護必要度(以下「看護必要度」)」は、患者がどのような医療を受け、どのような身体状況にあるのかを定量する指標で、測定項目には、「A モニタリング及び処置等(A項目)」と、「B 患者の状況等にかかる評価(B項目)」がある。A項目では専門的な治療と医学的処置の評価項目が、B項目では患者の状況等を表す評価項目が示されている。看護師から見るとA項目は治療の補助として提供する看護にあたり、B項目は療養上の世話として提供する看護にあたる。一般病棟用、特定集中治療室用、ハイケアユニット用が設定されている。

2015年7月16日、厚生労働省は中医協・入院医療等の調査・評価分科会に、急性期病床で患者状況などを評価するための「重症度、医療・看護必要度」のB項目について、病棟種別に3種類(一般病棟用=7項目、ハイケアユニット用=13項目、特定集中治療室用=5項目)に分かれている現行の項目数を、再編して7項目に統一する方向性を論点として提示した。

■看護・医療必要度B項目の種別違い(○印実施項目)

01

民間の救急救命士活用案の検討

2015年7月17日、総務省消防庁は、救急救命士をショッピングモールや野外イベント会場などで待機させるなど、民間の救急救命士を活用する案を、救急業務のあり方に関する検討会に示し、傷病者の発生後、民間の救急救命士が駆けつけ、応急処置などを行い、救急隊に引き継ぐことを想定しての検討を始めた。救急車の出動件数の増加(2014年に過去最多の598万2,849件)や通報から病院搬送までの時間が年々延びていることも背景にあることを踏まえ、到着前に傷病者の応急処置ができる仕組みづくりの具体策を来年3月ごろにをまとめる。迅速な対応で救命率の向上につなげることを目的としている。

救急救命士の登録者数(2014年4月1日現在)は約4万8000人で、このうち3割強の約1万7000人が、病院や企業など消防機関以外に所属している。実際には、看護師等の資格を持つものが多数受験をし救急救命士資格を有していることから1万7千人がすべて活用できる人材にはならない。

名称未設定-16

大切な命を救うためには、『救命の連鎖』と言われる「早い通報」・「市民が行なう応急手当」・「救急隊が行なう救急処置」・「医療機関が行なう医療処置」が重要です。

■救急救命士とは

患者を病院に運ぶ救急隊員に医療行為を認める目的で1991年(平成3年)に誕生した。一定の経験を積んだ隊員が専用の養成所に通い資格を得るほか、近年は養成コースをもつ大学や専門学校が登場している。

当初は静脈路の確保や器具を使った気道確保などしか認められていなかったが、医師の指示を受けることを条件に、2004年から気管挿管、2006年からは薬剤投与(アドレナリン注射)ができるようになった。

2014年4月から救急搬送中に救急救命士ができる医療行為に、①血糖値測定、②低血糖患者へのブドウ糖投与(医師の指示が必要)、③心肺停止前の傷病者への静脈路確保・輸液(医師の指示が必要)が加わった。

2012年度に全国129消防本部などが参加した実証研究で有効性が認められ、国が救急救命士法施行規則を改正した。

各消防本部が運用を始めるには、救急救命士が必要な講習を受けることのほか、医療機関との連携体制を整えることなどが条件となっている。

ただ、救急隊の救急救命士が医師の指示でブドウ糖溶液の投与や気管内チューブによる気道の確保などが可能な一方、消防機関以外の救急救命士の資格保有者は、法によりそうした行為は実施できない。

医師数調査結果

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、全国の病院を対象に「必要医師数」(現在の医師数に追加して必要な医師数)を調査した結果をホームページ上で公表した。

同調査は、地域別・診療科別に必要医師数の実態を把握し、医師の確保や偏在を解消する対策を検討するのが目的で行われている。全国8642病院を対象に、郵送で調査票を送付。2015年6月2日までに4319病院から有効回答を得た。

調査の結果、医師を必要としている病院と必要としていない病院が共に50.0%で、実際に求人中の病院は37.0%、求人をしていない病院は63.0%だった。
 

地域別では、福井県(必要求人医師数倍率1.15)、秋田県(1.14)、静岡県(1.12)などで医師が不足しているとみられる。一方で、東京都(23区のみ)では医師を必要としている病院が3割強にとどまり、ほかの地域と比べて医師が充足していることが示唆された。
 

診療科別では、リハビリテーション科(1.14)、救急科(1.10)などで、また総合診療科などの全科を見る診療科(1.09)で医師不足の傾向が見られた。
 

病院が保有する病棟機能別では、急性期と回復期と慢性期(1.14)、急性期と慢性期(同)、回復期と慢性期(1.11)、急性期と回復期(1.10)、高度急性期と回復期(同)、高度急性期と急性期と回復期(同)など、複数の機能の病棟を併せ持つ病院で医師を必要としている傾向が強かった。
 

そのほか、中小民間病院では医師不足とそうではない病院に二分している傾向や、二次救急医療機関の特に救急科で医師が不足している傾向などが見られた。
 

また、医師を採用する方法(複数回答)としては、大学の医局などへの依頼が75.1%を占め、次いで民間職業紹介事業者46.9%、直接採用44.2%の順だった。新医師臨床研修制度の導入で研修医の大学病院離れが進み、大学病院で医師不足に陥っているとされるが、依然として大学病院の医師派遣機能に期待している病院が多い実情が浮き彫りになっている。

問われる薬局のあり方

いま、薬局のあり方(かかりつけ薬局、門内薬局、健康情報拠点薬局、住民の健康相談窓口、健康づくり支援薬局など)が問われている。

2015年7月、保険薬局経営者連合会は、2016年度調剤報酬改定への提言を発表した。提言では、次回の調剤報酬改定でかかりつけ薬局や保険給付率を焦点に、報酬制度が抜本的に見直される可能性があるとした上で、(1)調剤報酬の簡素化(2)医薬品ごとに(あるいは疾病ごとに)保険給付率を変動させる(3)かかりつけ薬局の制度化-の3点を挙げた。
 

「調剤報酬の簡素化」では、「調剤基本料と管理指導料(薬学管理料)は一元化し、加算はすべて廃止」して、「調剤料は薬価×係数のかたちに整理する」ことにより、調剤報酬は「基本料α+薬価×β」として算出することになり、同一の処方せんであれば、どの薬局でも点数は同じになる。簡素化の理由については、薬局が算定要件を満たすことに追われる現状を改め、患者を呼ぶためのサービス向上を促す狙いがあるとしている。この式では、薬価の高い医薬品を出す薬局の方が収入は上がるが、患者から見ると、負担の大きい薬局に映るといい、後発品の利用を勧めるような薬局であれば、負担の軽い薬局ととらえるようになるという。その際、薬局が「このような理由で先発品を使っています」と説明できればそれでいい。それができなければ、「淘汰されていく」とし、この仕組みによって患者主導で薬価が抑えられるようになる。
 

「かかりつけ薬局の制度化」は、患者が一つの薬局を「かかりつけ薬局」と決め、その薬局で保険調剤を受けると、自己負担は3割に抑えられるが、それ以外の薬局では、自己負担を1割増の4割にするといった仕組みだという。その月の初めに利用する薬局をかかりつけ薬局とし、翌月に別の薬局を利用すれば、今度はそこがかかりつけ薬局になる。「薬局はその患者のかかりつけ薬局に選ばれたいので、一生懸命サービスをする。そのように薬局同士の競争が進めば、患者志向の薬局へ競争が進む。」としている。
 

調剤報酬の簡素化により、薬剤師が行った内容に関係なく、報酬が一定になるため、サービスの低下が起きないかという疑問もあるが、金額を一律にした時、純粋にサービスの質が問われる。かかりつけ薬局を決めた場合に自己負担が安くなるのであれば、どの薬局を使うかを考えるため、むしろ質が悪い薬局は淘汰されていくのではないかとしている。
 

いま、薬局のサービスレベルの向上が問われている。薬局の薬剤師には、国民と国からの期待に応えるという緊張感が必要だ。

南海地震を想定した防災訓練

日本医師会(日医)は7月29日に通信衛星利用の実証実験を兼ねた防災訓練を行い、南海トラフ大震災に備える。訓練には静岡など5県の医師会と独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが参加し、通信衛星を使ったテレビ会議やクラウドシステムで被災地と情報を共有しながら、JMAT(日医災害医療チーム)の派遣や関係機関との調整といった対応要領を確認する。

衛星を利用した訓練は、今回で3回目となる。昨年の訓練では、JAXAのインターネット通信衛星「きずな」と日医のクラウドシステムを活用し、日医の災害対策本部と高知など3県の医師会がリアルタイムで情報の共有やテレビ会議を行った。

今回は静岡と宮崎両県の医師会を加え、東海から九州地方までの広範囲の地域を想定して訓練を行う。

■南海トラフ地震とは

日本列島の太平洋沖、南海トラフ(静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ4000メートル級の海底の溝:トラフで、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む境界にある。)沿いの広い震源域で連動して起こると警戒されているマグニチュード(M)9級の巨大地震。

■最悪(M9)の被害予想

津波の高さは最大32メートル、太平洋側の広い地域で数メートルの津波が襲う。逃げなければ生存率は「0」。中部から九州までの空港は津波で浸水する。東京でも数メートルの津波が襲い、海抜0メートル地帯が広がる関東では、死者が数千人に上る。

・死者:最大で死者32万3千人~33万人
死者が最大となる県は静岡県。ここでは、最大10万9000人が死亡するという。

・負傷者:62万人。60万人以上もの人が病院に行けば、被災地域のほとんどの病院は収 容人数の限界に達する。そ
して社会機能は停止する。インフラの復旧に時間を要する。

・家屋:倒壊家屋238万6千棟

・ライフライン:最大3440万人が断水、最大2710万軒が停電、電話は最大930万回線が不通になる。水道は、上水道で3210万人・下水道で3210万人が断水となる。

・避難所生活者:500万人最大2万3千人ほどがエレベーターに閉じ込められる。

・経済被害:220兆3000億円
日本のGDP(国内総生産)の42%、東日本大震災の10倍以上である。南海トラフ巨大地震では、工業出荷額が日本全体の3分の2に達する「太平洋ベルト地帯」に被害が及ぶ。コンビナート施設では、原料等の流出が最大で約60施設、破損などが約890施設。

・飲料水備蓄:地震発生1週間で食料9600万食、飲料水1億4500万リットルが不足し、場合により、闘争や餓死にもつながりかねない非常に危険な数字である。

・廃棄物:2億5000万トン。これは、東日本大震災の約12倍。この量の瓦礫処理は不可能に近い。

名称未設定-15