月別アーカイブ: 2016年1月

健康寿命の延伸はアルマ・アタ宣言の実行を

国民の健康寿命延伸や医療費適正化に向け、主要な医療関係団体、経済団体、保険者などが民間主導で「日本健康会議」を立ち上げる。2015年7月10日に東京・日本橋で発足式を開き、今後の目標として「健康なまち・職場づくり宣言 2020」を発表する予定である。

会議の取り組みは政府が進める方向性と合致しているとして、厚生労働省や経済産業省も支援に当たる。
 

1978年9月12日、 WHO(World health organization:世界保健機関)とUNICEF(United Nations Children’s Fund:国際連合児童基金)の共催により、カザフスタン共和国アルマティ(旧ソ連アルマ・アタ)で開催された国際会議において、新しい健康に対する概念としてプライマリー・ヘルス・ケア(PHC :Primary Health Care)の大切さを明確にした最初の国際宣言(アルマ・アタ宣言)が採択された。健康であることを基本的な人権として認め、全ての人が健康になるために、人々の最も重要なニーズを把握したうえで、問題を住民自らの力で総合的にかつ平等に解決していくアプローチがPHCである。
 

宣言では、人間の基本的な権利である健康に関して格差や不平等は容認されるべきではないという基本精神に基づき、健康教育や母子保健・家族計画など10項目をPHC基本活動に取り組むことをうたっている。この宣言が出されたことによって、PHC「すべての人に健康を」を目標達成のKEYとして、世界的な健康戦略の基本となった。
 

健康は、たんに「病気ではない」ということではなく、身体の不調を引き起こす根本的な原因が、十分な食べ物、清潔な水、住居の様子、家庭の状況、地域の医療システム、教育状況など、その多様さから、どこか一つを改善すれば、健康の問題を解決できることにはならない。 つまり、健康は、さまざまな分野(農業、教育、通信、建設・水利、社会、経済、文化、政治、人権など)と連携して問題に取り組まなければ、解決可能にはならないとしている。こうした宣言の背景には、人の生命の尊重があるが、日本の健康寿命推進の背景には医療費の高騰や社会保障・医療費の抑制(国の債務削減対策)がある。
  

■WHOのマークの蛇の意味

ギリシャ神話において、優れた医術の技で死者すら蘇らせ、後に神の座についたとされるアスクレピウスは、蛇によって薬草の効用を知ったことから自分のシンボルにしたとされる。
医神として現在も医学の象徴的存在となっている。

名称未設定-25

産業競争力会議素案に日本国際病院や後発品使用促進など

2015年6月22日、政府は、産業競争力会議(議長=安倍晋三首相)と経済財政諮問会議(同)を相次いで開き、「『日本再興戦略』「骨太方針2015」(骨太方針素案、医療・介護のポイント)のそれぞれの素案を提示した。

再興戦略には、外国人患者の受け入れに意欲的な医療機関を「日本国際病院」(仮称)とする案などを打ち出したほか、骨太方針には、都道府県が策定する地域医療構想(ビジョン)を通じて、療養病床の入院受療率の地域差を縮小させることや、後発医薬品の使用促進などを盛り込んだ。

政府が提示した再興戦略と骨太方針に、異論はほとんど出なかったが、産業競争力会議と諮問会議は再度、素案について協議し、最終的に取りまとめた後に6月30日の閣議決定を目指す。両会議の終了後に記者会見した甘利明・経済再生担当相は、経済成長に軸足を置いた方向性について、「安倍内閣の一丁目一番地は経済再生なくして再建なしであり、正しい判断だ」と述べた。
 

再興戦略には、医療・介護・健康分野は、健康・予防意識の高まりといったニーズの多様化が進む中で、少子高齢化の進展で需要は急速に拡大、一部地域で人手不足が極めて深刻化するといった大きなターニングポイントを迎えているとしている。
 

その上で、今年度中に検討する具体的な施策として、地域版次世代ヘルスケア産業協議会の設立を促進、それらをネットワーク化し、地域で成功したビジネスモデルなどの横展開を強化する案を示した。また、外国人患者の受け入れなどを一気通貫でサポートする企業を認証したり、外国人患者の受け入れに意欲的な医療機関を日本国際病院として、海外に分かりやすく発信し、外国人患者の集患に取り組むなどとしている。
 

一方、骨太方針には、入院医療の適正化だけでなく、外来医療についてもデータに基づき地域差を分析、重複受診・重複投与・重複検査などを適正化し、地域差を是正するとした。また、後発医薬品の数量シェアの目標は、17年半ばに70%以上にし、その時点の進ちょく評価を踏まえ、18年度から20年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上にすると明記した。

こうした政策に病院がどう対応していくのかが管理者の喫緊の課題となる。

地域医療構想の共通課題

2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となり、現在の医療体制では対応できなくなることから、都道府県が2015年4月から地域医療構想を策定し、質の高い医療と介護を地域で効率的に提供するための施策を実行することになっている。

医療機関は、2025年に向かって、地域医療構想がどんなかじ取りで進んでいくのか理解しておかなければ、地域で取り残されてしまう可能性がある。

地域医療構想の策定と実現に当たっては、都道府県単位・2次医療圏単位で会議体が開かれ、様々なステークホルダー(直接的・間接的に影響を受ける人々や団体などの利害関係者)が携わることになっている。

都道府県の担当者の多くは、地域医療構想は、将来の必要病床の整備などを地域の医療関係者が主体的に検討することが大きな柱となるので、策定に向けて地域の医療関係者に理解が得られるかどうかが最大の課題とみている。

都道府県単位の会議体の代表例が、都道府県医療審議会や保険者協議会で、医療専門職・行政・保険者の代表などで構成されるこれらの会議体は、地域医療構想の策定に係る議論をするのはもちろん、医師会・薬剤師会・病院団体といった医療提供者、住民、市町村などの意見を吸い上げる役割ももつ。

なお、今後、都道府県は地域医療構想を策定・実行支援するに当たり、財政的な責任を持たなければならないので、医療政策に関する権限と責任が国から地方へ移譲するというのも、地域医療構想がもたらす大きな変化である。

地域医療構想の実行に当たっては、2次医療圏単位でつくられる“地域医療構想調整会議”がカギを握る。地域医療構想調整会議では、地域医療構想を推進するために必要な、ステークホルダー間のすり合わせが行われることとされ、地域医療構想調整会議の結成は、圏域連携会議など、既存の枠組みを活用する形でも良いとされている。

名称未設定-24

図 (『第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会』より)

■議論の進め方(『地域医療構想策定ガイドライン』より抜粋)

地域医療構想調整会議において病床の機能の分化及び連携に関する議論をする場合における議論の進め方の一例を以下に示す。

ⅰ地域の医療提供体制の現状と将来目指すべき姿の認識共有

病床機能報告制度による情報や既存の統計調査等で明らかとなる地域の医療提供体制の現状と、地域医療構想で示される各医療機能の将来の医療需要と必要病床数について、地域医療構想調整会議に参加する関係者で認識を共有する。

ⅱ地域医療構想を実現する上での課題の抽出

地域の医療提供体制の現状を踏まえ、地域医療構想を実現していく上での課題について議論する。

ⅲ具体的な病床の機能の分化及び連携の在り方について議論

例えば、ある構想区域において、回復期機能の病床が不足している場合、それをどのように充足するかについて議論する。現在、急性期機能や回復期機能を担っている病院関係者等、都道府県が適当と考えて選定した関係者の間で、どのように回復期機能を充足するか議論する。

ⅳ地域医療介護総合確保基金を活用した具体的な事業の議論

ⅲで議論して合意した事項を実現するために必要な具体的事業について議論する。地域医療介護総合確保基金を活用する場合には、当該事業を基金に係る都道府県計画にどのように盛り込むか議論し、都道府県において必要な手続を進める。

不妊治療を始める目安を2年から1年に見直し

2015年6月20日、日本産婦人科学会(日産婦)は、「妊娠を望んでも2年かなわない状態」と定義している不妊症について、「2年」を「1年」に見直す案を発表した。通常は夫婦が妊娠を望むと、1年で約8割、2年で約9割が妊娠すると言われている。

現在では、不妊治療を始める目安が2年で、妊娠を望んでもかなわない状態(不妊症)の男女が約1割いると判断される。

学会が今回変更する不妊症の定義案では、「男女が妊娠を希望し1年間、避妊することなく性交を続けているのに妊娠しない場合」と見直す。今後、学会員の意見を聞き、8月に正式に決めることにしている。
 

世界保健機関(WHO)は、「1年間の不妊期間を持つもの」と定めているほか、欧米の学会も1年としていることなどから、変更することにした。
 

ただ、卵巣や精巣など生殖機能に異常があって医学的な介入が必要な場合は期間を問わないとする。
期間はあくまで受診する目安で、診断は医師が行い、自由診療で行われる体外受精などに進む場合がある。

アタマジラミの感染拡大

保育園児や小学生の間で、頭に寄生するアタマジラミの感染が広がっている。
 

アタマジラミは、感染力が強く、感染すると強いかゆみが生じる。シラミを知らない親(大人)が増えたことや発見と対処が遅れているのが感染拡大の一因とみられている。
 

東京都の保健所へのアタマジラミの相談件数は、2007年度の1935件から減少傾向となり、2012年度には815件であった。2014年度のは1602件の相談件数と倍増している。

市販されている駆除薬(大日本除虫菊、アース製薬)の出荷量(2014年度)が3割増加している。国立感染症研究所の調査では、駆除薬に抵抗力を持つシラミも発見されていると言い、アタマジラミを根絶することは難しいという。予防や駆除の正しい知識を持って対処する必要がある。

■予防と感染時の対応

名称未設定-22

名称未設定-19

名称未設定-20

■アタマジラミのサイクル

名称未設定-21

携帯9機器を医療機器への影響ガイドラインの基準に盛り込む

2015年6月17日、総務省の「電波の医療機器等への影響に関するワーキングクループ(WG)」は、携帯電話などが発する電波が、体内に植え込まれた心臓ペースメーカーなどの医療機器に与える影響を防止するためのガイドラインの改定案をまとめた。改定案では、新たに脳深部刺激装置など植え込み型と補助人工心臓駆動装置など装着型の計9つの医療機器に対する基準が盛り込まれた。

今回まとまったのは、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針」の改定案で、2014年度に総務省の依頼でNTTアドバンステクノロジが実施した「電波の医療機器等への影響に関する調査」の結果を受けての改定案で、6月23日に開かれる同WGの上部組織に当たる「生体電磁環境に関する検討会」に提出される。
 

改定案では、①脳深部刺激装置、②脊髄刺激装置、③仙骨神経刺激装置、④迷走神経刺激装置など6つの植え込み型医療機器で、スマートフォンなどを含む携帯電話から最長5センチメートル程度で影響を受けることがあった。このことから、機器の装着者は携帯電話を使用する際、「装着部位から15センチメートル程度以上離すこと」などが適切とされた。
 

また、装着型医療機器では、①補助人工心臓駆動装置、②ポータブルインスリン用輸血ポンプ、③携帯型輸血ポンプが新たに対象になり、これらの機器については、携帯電話から最長3センチメートルの距離で影響を受けることがあった。このことから、装着者は携帯電話を使用する際、「取扱説明書や医師の指示に従うなど、注意し使用する」ことなどが示された。今後は、社会で実際に使用する際の条件での影響についても調査する必要がある。

名称未設定-17

補助人工心臓駆動装置

名称未設定-18

過去5年の2000人以上の精神保健医を調査

厚労省は4月、聖マリアンナ医科大病院(川崎市宮前区)に勤務・在籍経験のある指定医11人と、その指導を担当した指定医(指導医)9人の計20人の指定を取り消した。この処分の際は主に申請者側に着目して調査したが、今回は指導医側に注目して調べを進めたところ、同じ症例、同じ入院期間で重複するレポートのうち1件で、前回処分した指定医が診療にかかわっていないことが確認されたため、署名した指導医1人と、また、重複例でないレポートのうち2件でも、診療にかかわったことが確認できなかったため、指導医として十分に確認をせず署名した指導医2人を処分することを決め、聖マリアンナ医科大病院での一連の不正取得問題で指定医を取り消される処分を受けた精神保健指定医は23人となった。
 

厚労省は現在、同病院以外でも同様の不正が行われていないかを調査している。調査対象は、カルテを保管することになっている過去5年間に指定された少なくとも全国で2000人以上の医師とみられ、同省の担当者は「調査結果の報告にはあと数か月かかる」としている。

一般病院の4機能別推計病床数

6月15日、政府の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」が2025年に必要な病床数の推計(まとめ)をまとめ公表した。

報告では、病床機能報告制度で医療機関が報告し、2015年3月時点でデータクリーニングが完了した約123万4000床分の結果に基づき、2025年に必要な高度急性期と急性期、回復期、慢性期の4つの機能ごとの状況では、急性期病床が多く、回復期の病床数が不足する見通しである。

 
今後は都道府県単位で策定する地域医療構想で、急性期の絞り込み、回復期・在宅シフトの強化は必至となる。
入院患者数に見合った病床機能の調整(必要数に対する増減計画)が行われることになると考える。

名称未設定-16

2025年の都道府県別一般病院の病床数

6月16日、2025年に必要な都道府県別の推計増減病床数を発表した。2013年の精神・結核病床を除く全国にある一般病院の病床数は135万床である。2025年の病床必要数は、115万~119万床で、埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪・沖縄を除く41都道府県で16~20万床減らすことになる。

増床を迫られる都道府県でも、市町村によって、病床数を増やす地域と、病床数を減らす地域が出てくる。新たに病院を建設する場合は、病床の多い市町村での建設は困難となる。少ない地域での建設を迫られることが出てくる。また病床の多い地区の減少に向けた調整は難航することが予測できる。

一方、自宅や介護施設、高齢者住宅で在宅医療を受ける患者は30万人~34万人増える見込みで、病床を減らした施設で働く看護師等を介護施設や在宅に振り分ける意向で進められている。

■2015年都道府県別病床数の増減推計値 

名称未設定-15

がん・循環器病罹患のリスクチェック

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターで、過去20年にわたる10万件の日本人の生活習慣と、がんや他の疾患との関係について調査を続けた分析結果から、どのような生活習慣が、がんや他の病気に繋がりやすく、また病気に罹りにくいのかを、一般の方にも分かりやすい形のコンテンツにまとめた。人が健康的な生活を送るために、以下の各コンテンツで生活習慣に潜むリスクをチェックできるようになっている。

現在の生活習慣から導かれる今後10年の罹患リスクが診断でき、同年代の人たちとの平均と比べ、罹患リスクがどのような位置にあるのかが示される仕組みになっている。

セルフケアを行う上で有用な指標を示してくれる。

■がんの発生部位別死亡率

名称未設定-13

名称未設定-14

がんと循環器の病気リスクチェック

40歳から69歳の男女が対象。
すべてのがん、および心臓病や脳卒中など循環器の病気に今後10年のうちに罹るリスクが算出できる。

大腸がんリスクチェック

40歳から69歳の男性が対象。
年齢、肥満度、飲酒、喫煙、運動習慣から大腸がんに罹るリスクが算出できる。

脳卒中リスクチェック

40歳から69歳の男女が対象。
年齢、性別、喫煙、肥満度、糖尿病、血圧から脳卒中を発症するリスクが算出できる。

5つの生活習慣によるがんリスクチェック

45歳から74歳の男女が対象。
年齢、性別、喫煙、飲酒、食習慣、運動習慣、肥満度から、今後10年の間にすべてのがんに罹るリスクが算出できる。