月別アーカイブ: 2015年11月

日本医療研究開発機構の仕組みと役割

2015年4月に発足した日本医療研究開発機構(医療研機構)は、予算をまとめて管理し、画期的な新薬につながるような研究に研究費を配分したり、病気により失われた身体の機能を回復するための再生医療(iPS細胞:人工多機能性幹細胞)や認知症対策、がん治療などに応用できるよう予算配分をし実用化に向ける役割を持つ。

研究成果が新薬などの開発につながらない縦割り行政(医療を担当する省庁が、厚生労働省、経済産業省、文部科学省にまたがっていて共通目標に欠けている)を医療研機構で集約して行うことになりスムーズな流れになる。

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不眠症治療で糖尿病改善?

大阪市立大学のチームは、睡眠中の糖尿病患者63人の脳波を測定し、血糖値の悪化に伴って眠りが浅くなり、不眠症などの睡眠障害になりやすいことを突き止めた。睡眠障害になると早朝の血圧が高まり動脈硬化が進むほか、血糖値もさらに悪化する悪循環に陥るという。そこで、糖尿病患者数人に睡眠障害の投薬治療を行ったところ血糖値が改善した。
 

糖尿病の治療では血糖値を下げるインスリンの投与が中心で睡眠障害の積極的な治療はなされてこなかった。
今後さらに多くの患者の状況を調べて確認するという。研究成果は、4月14日の米国電子版科学誌プロスワンに掲載された。

■糖尿病患者の不眠の割合

I型糖尿病(インスリン依存型の若年糖尿病)ではうつ病の合併が3割ぐらい、Ⅱ型(生活習慣病などによるインスリン抵抗性糖尿病)では2割ぐらいと言われている。I型の方の不眠の出現率は4割から5割ぐらいで、Ⅱ型の方が3割から4割ぐらいある。

■不眠症の尺度(ピッツバーグ睡眠質問票PSQI: Pittsburgh Sleep Quality Index)
1992年にピッツバーグ大学のダニエル・バイジーが不眠症の評価尺度を作製した。この点数が悪化するごとにヘモグロビンA1cの値が2%ずつ悪くなるというエビデンスが出ている。

特別養護老人ホーム、52万人の入居待ち

全国に約9000か所ある特別養護老人ホーム(特養)に54万人が入所している。介護が必要な人の生活の場として、本人か家族が、直接、希望する施設に申込み、介護の必要性や生活状況を勘案して施設の入所判定会議で入所が決定される。

2014年3月時点の特養入所待機者は約52万人いる。入所費が安い特養に集まってくるという。また、介護人材不足により施設を全オープンできない施設や4月から変更された要介護度による入所条件(原則、要介護度3以上)により重度の介護者が集まり過重労働になる。さらに人材不足となり、過重労働になる。2015年4月から介護報酬点数は減少し、介護職員の賃金引上げのための加算が設けられた。

特養の利用料は、国が基準を定めている。要介護度ごとに定められている介護費の1割負担と居住費(室料、光熱水費)、食事費で、ユニットケアの場合、月約12~13万円(室料5万円、高熱水費1万円、食費4.2万円、介護費1割負担)、従来型(2~4人部屋:多床室)では、室料はないため、7~8万円である(8月から1.4万円室料徴収)。
低所得者の場合は、室料、光熱費、食費が軽減される。

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感染症危機管理の専門家養成へ

2015年4月20日、厚生労働省は、国際的な感染症制御のマネジメントが可能な「感染症危機管理専門家」を今年度から養成することを発表した。
 

海外では政府が主体的に感染症の専門家の養成を行っているケースが少なくない。しかし、日本における感染症の専門家の養成は、大学や研究機関に頼っている実情があり、西アフリカでのエボラ出血熱への対応では、各国が数十人から数百人規模の専門家や医療者を派遣する中、日本からは少数の専門家しか派遣できなかった。
 

また、感染症の流行地における危機管理には、臨床経験だけでなく、行政知識や国際調整能力なども求められることから、厚労省はこうした知識を持つ人材を継続的に育成することが必要と判断したという。
 

約2年間の養成プログラムのうち、1年目は厚労省の結核感染症課や国立感染症研究所などで経験を積み、2年目はCDCや世界保健機関(WHO)などで国際的なマネジメントなどの技能を取得することを想定している。
今年度の応募期間は5月20日までで、臨床研修を含め5年以上の臨床経験のある医師が対象となる。研修期間中は、公務員の身分として(大学院の所属は可能)、約2年間の養成プログラム期間中に国立感染症研究所や米疾病対策センター(CDC)などで経験を積み、修了後は厚労省に専門家として登録するという。
 

感染症発生後の感染症海外支援員の育成ということと理解する。

感染症や医療事故の発生で最も重要なことは、「予防」である。感染は地域住民に起きる。したがって、地域住民の感染に対する関心や予防の知識や意識を高めることが最も重要な感染予防策である。そうした活動をする専門家を国内向けに行う政策も必要と感じる。日本を訪れる旅行者、海外を旅行する日本人も増えている。いつどこで感染してもおかしくない環境になってきている。

世界経済フォーラムが5月6日発表した2015年の旅行・観光競争力ランキングで、日本は世界で9位と前回13年の14位から順位を上げている。外国人観光客は年々増えている。

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入院基本料届出病院数、病床数の動き

日本アルトマーク(医療分野における情報提供サービス企業:東京都中央区)が半年ごとに実施する入院基本料の届け出病床数調査では、2015年5月時点と比べ2014年11月時点の一般病棟7対1入院基本料の届け出病床は36万6510床で、7558床減った。10対1は17万8486床で、1万601床減少。13対1は2万2404床で、120床減。15対1は4万5629床で1694床減であった。

一般病棟入院基本料を届け出ていた病院数は5123施設で、5月時より56施設減少した。入院基本料別では、7対1が1551施設で68施設減。10対1が2153施設で、34施設増。13対1が412施設で、9施設増。15対1が866施設で22
施設減であった。

一方、地域包括ケア病棟入院料か同入院医療管理料を届け出た病院は、昨年5月で895施設(届け出病床:計2万3790床)で、11月には2万1070床増加した。

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札幌の医療法人恵和会でマタハラ、敗訴か

マタニティーハラスメント(マタハラ)を受けた女性(40歳代)が勤める医療法人「恵和会宮の森病院(療養病床:240床)」(札幌市豊平区西岡4条)で、2011年(平成23年)以降、男性理事から食事に誘われるなどしたため、理事からの電話に出ないようにすると、2012年8月に異動や業務変更を命じられ過重労働を強いられた。2013年に妊娠を報告したところ、理事と女性上司から「想像妊娠ではないのか」などと言われ、中絶についての発言を受けた。

勤務先の病院を経営する同市の医療法人「恵和会」と上司2人(男性理事と女性の上司)に慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は4月17日、被告側に77万円の支払いを命じた。

判決理由で榎本光宏裁判官は、女性が妊娠を報告した後、上司が「想像妊娠ではないのか」と話したり、中絶に言及したりした点を「著しく不適切で配慮に欠ける」と指摘し、上司2人の言動は違法な嫌がらせと認定した。

「原告を心配したための発言だった」との被告側反論を「やむを得ない事情がない限り、著しく不適切だ」として退けた。

恵和会は「一部でも原告の請求が認められたのは遺憾だ」としている。
 

身体拘束はゼロだそうだが、精神拘束は100%。法律が守られないブラック病院ですね。看護師・介護士の女性の皆さんはこういう施設は敬遠した方がいいでしょう。部下を大事にしない幹部や上司がいるようでは、所詮、患者も大事にされていないと思えます。同性がマタハラをするようではなおさらのこと。ハラスメント教育は行っているのでしょうか。

■看護師を管理してきた男性看護管理者として

私は、女性管理者のこうした経験を持つ。
 

ある病棟で、有給休暇の消化を掲げ、そのことによってWLBの向上をめざし、離職率を減少させる目標で看護師皆が努力をしていた。

目標達成度の中間報告で報告した看護師長への他の看護師長の質問や意見は、「休みを増やすことによって看護の質を落としているのではないか。」や「有給休暇消化が病棟により差が出るのは問題である。平均化すべきだ。」などである。そうした女性間のつぶし合い(?)は結構ある。何とも残念な話である。

女性のためにあるマタニティ時の権利を対象である女性上司が執行しないようではいつまでたっても女性の立場は変わらないであろう。かつて女性の仕事は、家事・育児であった。女性の社会進出はそうした性差による差別を是正したかったのではないのか。国民に与えられた権利(法)を守れない上司(男女とも)は、上司にしてはいけない。

こういう上司の元では、上司の顔色をうかがいながら仕事をするか、辞めるかしかない。仕事をしての達成感や充実感、満足感、モチべーションは得られない。

病床再編に向けた7対1入院基本料の見直しか

4月16日、政府の経済財政諮問会議は、今夏にまとめる財政健全化計画に向けて「インセンティブ改革」による歳出削減を図る方向で一致した。民間議員が提出した資料には、歳出を効率化していくために、企業や自治体、国民の意識や行動の変化を促すインセンティブの仕組みを改革する必要があるとし、特に、社会保障分野では、高度急性期から一般急性期や回復期、さらには療養病床から在宅医療などへの移行といった病床再編を進めるにあたって、診療報酬の減額による大胆な誘導が必要だとし、一般病棟7対1入院基本料(7対1)の引き下げなど診療報酬による大胆な誘導を行うことで病床再編を加速させるよう提言している。7対1の加算も減額することで15対1病床などとの収益差を縮小すべきとしている。

2014年度から入院基本料取得の施設要件を厳しくしたが、入院基本料の変更申請をした病床は約2万床にとどまっている。2025年までの将来病床構想(下記図)とは大きくかけ離れている。7対1の病床は、思った以上に病床数が減少していない。

7対1の病床が減少することで看護師必要数も大きく変動することから看護師不足の解消にもつながる。

施設要件の厳しさと診療報酬の減額は、病床再編の車の両輪となるであろう。

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ミスでは済まされない誤ルート

2015年4月、日本医療機能評価機構は、内用液を皮下注射するなど誤った投与経路で薬剤を投与していた医療ミスが2010年1月~15年2月末までに4件報告されたことから「医療安全情報」を発出し、医療従事者に対し、投与前の確認の徹底など再発防止を呼びかけた。中には「禁注射」ラベル確認後に注射したケースもあった。

ミスが報告された4件は以下である。

1.リスパダール内用液:経口投与すべきところを皮下注射した。

2.ケイツーシロップ:経口投与すべきところを静脈注射した。

3.メプチン吸入液ユニット:吸入すべきところを点眼した。

4.トロンビン液ソフトボトル:局所噴霧や経口投与等すべきところを静脈注射した。本薬剤を、静脈内に誤って注入すると、血液を凝固させ致死的な結果をまねくおそれがある。

また、アナフィラキシーを起こすおそれもあるので、静脈内はもちろん皮下・筋肉内にも注射しないこととされている止血薬である。

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日本医療機能評価機構の発表では、トロンビン液(5000単位)については、看護師が経口薬であることを知らず、ボト
ルの「禁注射」の記載を見て、液を注射器に吸い取って静脈注射することが「禁」だと勝手に解釈し、その後、指示など
を確認しないままボトルを輸液ルートの側管に接続し、静脈注射した。

リスパダール内用液(0.5mL)については、皮下注射時に使用する注射器に吸い取られ、針が付いた状態で内服薬用の薬杯の中に準備されていた。看護師は指示を確認しないまま、皮下注射した。翌日の勤務者がリスパダール内用液を患者に内服させた際、患者より「昨日は注射をしてもらった」と発言があったため、前日の勤務者に確認したところ、皮下注射していたことが分かった。

これらの投薬のミスは、最も基本的な投薬に関する学びがなされていないことを感じる。また、一人よがり、勝手な思い込みで行動していることにある。確認しづらい職場の雰囲気があるのかもしれない。直接、体内に薬(有害物質)を投与するということは生命に直結する行為であることを今一度、再認識しなければならない。管理者の「注意しなさい、気をつけなさい」は、耳には届いても脳には届かない。自発的な啓発(注意喚起)が図れるように管理しなければならない。

■ケイツーシロップ

生後1ヶ月前後の母乳栄養児に多くみられる乳児ビタミンK欠乏性出血症(ビタミンK依存性凝血因子の欠乏による出血症:頭蓋内出血を主徴として発症し、予後が重篤)の予防で投与される(出生24時間以内、6日目、1ヶ月後にビタミンK2シロップ 2 mg/1ml を10倍に希釈して 2 mg/10ml として内服させる)。本シロップは高浸透圧であり、壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis: NEC)が発症する危険性がある薬剤である。

■リスパダール

メジャートランキライザー(強力精神安定剤)の一種で、気分が高まってしまって落ち着かなくなってしまったり、 何もしたくなくなるなど停滞してしまった心身活動を改善する働きをするので「双極性障害」など気分がフラフラと変わってしまう疾患にも有効である。リスパダールは混乱などを起こす原因となる脳内のドーパミンという神経伝達物質の取り込みが過剰になり過ぎるのをブロックしたり、セロトニンという同じく脳内神経伝達物質の取り込みをブロックして思考・意欲減退の原因を断ち切る働きがある。

■メプチン吸入薬

交感神経β(心臓、腎臓、あるいは肺の気管支筋などに作用している)の中のβ₂は特に気管支を拡張する作用があり、β₂を刺激する薬品は「ぜんそく」など気管支が閉塞する病気の治療に用いられる。吸入薬は、ぜんそくの特効薬として登場したが、使いすぎると心臓に影響が大きすぎて危険なことがある。

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2型糖尿病治療薬の開発に向けて

2015年4月15日、MSD (Merck Sharp & Dohme:アメリカ合衆国を拠点とする製薬会社)の開発した選択的DPP―4阻害剤ジャヌビア錠(一般名シタグリプチンリン酸塩水和物)とアステラス製薬が開発した選択的SGLT2阻害剤スーグラ錠(一般名イプラグリフロジンL―プロリン)の配合剤を共同で開発・販売することで、基本合意したと発表した。

両剤は、「2型糖尿病」に効能・効果がある。2型糖尿病治療をめぐっては、単剤療法では血糖コントロールが難しいため、患者は多剤併用療法を受けるのが一般的である。

こうした状況を踏まえ、両社はジャヌビアとスーグラの配合剤を開発することで、将来的に2型糖尿病治療における新たな選択肢を提供できると判断した。MSDの広報担当者は、「配合剤を開発・発売できれば、併用療法よりも投与錠数を減らすことにつながる」とし、アステラスの広報担当者も、「両剤ともファースト・イン・クラス(画期的医薬品)なので、配合剤のメリットがある」と強調している。
 

ジャヌビアは、血糖を一定に保つ働きをするインクレチンを分解する酵素を阻害することで、血糖コントロールを改善する。

スーグラは1日1回の投与で選択的にSGLT2を阻害し、腎臓の尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで血糖値を下げる。
 

2型糖尿病の治療は、まず食事療法、運動療法を含めたライフスタイルの改善、ストレスの解消などが行われ、肥満(隠れ肥満を含む)を解消する。効果がない場合に薬物療法が開始される。

■2型糖尿病とは

血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気で、初期には自覚症状がほとんどなく進行し、血糖値が高いまま放置すると、徐々に全身の血管(動脈硬化)や神経障害(末梢神経障害:痛みやしびれなど)が発症し、糖尿病性腎症、糖尿病性末梢神経障害、糖尿病性網膜症という三大末期症状に至る。原因は遺伝や生活習慣(高カロリー食摂取、高脂肪食摂取、運動不足など)により「インスリン分泌低下と感受性低下の二つを原因とする糖尿病」が引き起こされる。糖尿病の95%は2型糖尿病である。

■1型糖尿病とは
 
リンパ球の自己抗体によって膵臓のインスリンを分泌するランゲルハンス島が攻撃を受け、まったくインスリンが分泌されなくなるインスリン依存型糖尿病である。小児糖尿病ともいう。

保育士として准看護師を算定可能に

厚生労働省は、2015年4月より施行された改正省令に基づき、准看護師が保育所の保育士として算定可能となったことを都道府県により、関係者に周知するよう通知した。
保育士の算定基準をめぐっては、これまで乳児4人以上を入所させる保育所について、保健師や看護師を1人に限って保育士として算定することが認められていた。

今年1月に「准看護師についても保育士とみなすことができるように措置する」などとした地方からの提案等に関する対応指針が閣議決定されたことを受け、厚労省は児童福祉施設の基準に関係する省令を改正し、准看護師の算定も可能とした。
 

同省は通知で、准看護師の算定に加え、研修の受講勧奨や医療機関との適切な連携体制の確保を留意事項として提示し、また、特に研修については、保育業務に従事したことのない准看護師が不安を抱えることのないように、「乳幼児の発達と心理」や「地域保育の環境整備」といった科目に加え、乳幼児期の食物アレルギーの基礎知識などの研修を受講することを要望している。

■発達段階と乗り越えるべき心理的課題(E・H・エリクソン)

1.乳 児 期:基本的信頼 対 不信

2.幼児期前期:自律性 対 恥・疑惑

3.幼児期後期:自主性 対 罪悪感