月別アーカイブ: 2014年9月

喘息による死者数激減

国内の患者数400万~500万人と推計される喘息、その死者数は1995年の7,253人をピークに減少が続いている。2000年4,427人、2005年3,198人、2010年2,065人、2012年には2,000人を切って1,874人と減少してきた。しかし、諸外国と人口10万当たりの喘息死亡者数を比較すると、日本2.0人に対して、ポルトガル1.5人、フランス1.2人、米国1.3人であり、日本はまだ高い。成人喘息の有病率が欧米では20%を超えるのに対し、日本は8.1%である。したがって、日本における喘息死亡率は極めて高いといえる。
 

喘息は、空気の通り道である気道が慢性的な炎症により過敏となる疾患で、ダニやほこり、たばこの煙、香水、冷たい空気などが刺激となる。原因はアレルギー反応によるものとよくわからないものがある。刺激により気道が狭くなり呼吸困難の発作を起こす。治療は、狭くなった気道を気管支拡張剤で拡げ、息苦しさを和らげる対症療法から、現在は慢性的な気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬の治療を基本として、アレルギー薬との併用や気管支拡張薬との併用が行われる。          

治療薬の進歩により先に示した疾患による死亡者数は確実に減少してきた。しかし課題として、症状が軽減すると吸入薬を中断し悪化することがあげられ、治療の中断により炎症が再発して発作を頻繁に繰り返すことで気道を傷つけ、傷が治らないうちにまた傷をつけることを繰り返し、気道が肥厚し刺激に過敏となり、発作が起きやすくなることがあげられる。

薬物の中断原因には、一日2回の吸入の手間などがあり、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の成分が一日一回の吸入で細胞表面に長く作用し、効果が持続する「レルベア」や、同じ配合薬で粒子が細かく気道の奥まで届きやすく、炎症の抑制作用が強力で気管支拡張に即効性をもつ「フルティフォーム」など開発され、利便性が増してきている。

■喘息による死亡者の推移
68

病院・診療所の建築基準法違反1724か所

昨年10月の福岡市の有床診療所火災で、入院患者・住人合わせて10人が死亡したのを受け、国土交通省が全国の病院・診療所計約16,000か所を調査した結果、約1割の1,724か所で防火扉が正常に作動しないなどの防火設備に関する建築基準法違反(昭和25年5月に制定され、国民の生命、健康、財産を守るため、地震や火災などに対する安全性や、建築物の敷地、周囲の環境などに関する必要最低限の基準が定められている。 ①消防法. ②耐震改修促進法. ③バリアフリー法. ④省エネルギー法. ⑤住生活基本法. ⑥住宅品質確保法. ⑦瑕疵担保履行法.などがある)が見つかった。そのうち防火扉やシャッターが正常に作動しない不具合が910か所(約53%)、防火設備そのものが設置されていないケースが430か所(約25%)あった。無届の増改築をして防火設備を設置していない(柱や梁などが耐火構造になっていないなど)541施設の違反については自治体により是正指導がなされている。
家屋は、人が住んで安全であることが大前提である。病院、診療所も終日、もしくは一定の時間に病人が集い過ごすこと、健康人に比べ「自立・自律」に障害があり、適切な判断と行動ができない人(災害分類でいえば要支援者)がいることを考えると、一般住宅以上に建築基準法の遵守が必要である。医療により人の命を救い、火災により患者の命を奪う医療機関では話にならない。国としては、建築基準法に合致した施設かどうか国民に対して表示すべきではないか。

特定機能病院の承認要件の変更

厚生労働省は、「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会(2012年3月から特定機能病院の承認要件を見直すための検討を重ねてきた:座長=遠藤久夫・学習院大教授)」の中間報告を受け、医療法施行規則の一部を改正し、特定機能病院(1992年6月改正、翌1993年4月施行の医療法の第2次改正によって制度化された医療機関の機能別区分のひとつで、良質な医療を効率的に提供するために、機能・特質に応じた施設の体系化を進め、医療資源がより有効に活用されるように、高度先端医療に対応できる病院を厚生労働大臣が承認した病院)の承認要件を見直すことを決めた。                  

現在、大学病院を中心に90施設近くが厚労相から承認を受け、高度医療を提供している。現行の要件は、①高度の医療の提供、開発、研修ができる病院である。 ②内科・外科など主要な10以上の診療科を有する。③病床数が500床以上である。④医師・看護婦数に関する条件、⑤他の医療機関からの紹介率などの外的要件がある。

新たな改正の要件は、①専門医を半数以上とする配置基準や、②16診療科の標榜を必要とするといった要件の改正案をまとめ、パブリックコメントの募集を始めた。

介護ロボットの入浴支援機器など3機種を重点分野に追加

経済産業省と厚生労働省は、ロボット技術による介護現場への貢献や新産業創出のため、平成24年11月に策定した「ロボット技術の介護利用における重点分野」に取り組むにあたり、改めてロボット技術の介護利用に関するニーズについて調査した結果、在宅介護や認知症ケアのニーズへ対応するために入浴支援など、1分野3項目を加えることを2月3日に発表した。今回の追加によって、開発の支援対象となる介護ロボットは5分野8項目まで拡大する。
 

新たに選ばれたのは、浴槽への出入りをロボット技術で援助する機器類と、在宅介護で使用する転倒検知センサーや外部通信機能を備えた機器のプラットホーム、主にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持などを支援する歩行支援機器である。

経産省と厚労省では、2014年3月から、新たな項目を加えた5分野8項目の開発補助事業の公募を開始する予定で、重点分野に選ばれた機器は、研究開発に必要な費用の一部を補助してもらえる。平成26年度予算案は、25.5億円、補助率:2/3(中小企業)、1/2(その他)本事業の取組状況については、介護ロボットポータルサイトを閲覧してほしい。また、「実証支援(ロボット介護機器導入実証事業)開発が新重点分野のロボット介護機器の中で、15機種・合計1500台程度の介護施設での大規模な実証を支援する事業」の公募を本年3月に開始する。 平成25年度補正予算案:20.5億円、 補助率:製造設置費用の 2/3(中小企業)、1/2(その他)となっている。

また、3月5日(水)に開催予定の第5回ロボット介護機器開発パートナーシップ会合にお いて、5分野8項目の重点分野や、開発支援、実証支援の説明会を行う。希望者は下記URLで参加登録を行い、詳細を確認してほしい。

●介護ロボットポータルサイト  
http://robotcare.jp/

●ロボット介護機器開発パートナーシップ
http://www.nedo.go.jp/activities/CA_partnership.html

■5分野8項目(●が今回新たに決定した重点分野)
分野(1)移乗介助
○ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
60

○ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器
61

分野(2)移動支援
○高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
62

●高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
(※今回新たに決定した重点分野)
63

分野(3)排泄支援
○排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
64

分野(4)認知症の方の見守り
○介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフホーム
65

●在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備 えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
(※今回新たに決定した重点分野)
66

分野(5)入浴支援(※今回新たに決定した重点分野)
●ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器
67

医労連の労働実態調査結果、看護師の75%は辞めたい

日本医療労働組合連合会(医労連)が昨年9月から11月に、全国の病院、診療所、訪問看護、介護施設などで働く看護師、准看護師、保健師、助産師を対象に実施した労働実態調査に約3万2300人から回答があり、以下の結果であったことを公表した。                               

仕事を「いつも辞めたいと思う」のは19.6%、「ときどき辞めたいと思う」のは55.6%であったが、「辞めたいと思わない」のは16.8%であった。看護職員のおよそ4人に3人が仕事を辞めたいと思いながら働いていることが明らかになった。その理由は、「人手不足で仕事がきつい」が最多で、次いで「賃金が安い」「思うように休暇が取れない」「夜勤がつらい」などが多かった。また、7割以上が慢性的に疲労を感じていることも分かり、看護職員の厳しい勤務環境の実態が浮かび上がった。                   

「いつも辞めたいと思う」の回答者を職場別に分類すると、病棟勤務の看護職員の割合が外来や訪問・在宅関係と比べて高く、また、勤務形態別では、「3交替」と「2交替」の割合が「日勤のみ」に比べて高い。                         

医労連は「病棟での夜勤交代制労働の負担が離職の要因となっていることがうかがえる」としている。さらに、看護職員の約6割が十分な看護ができていないと感じていることも明らかになった。その理由(複数回答)は、「人員が少なく業務が過密」が7割以上で最も多かった。一方で、仕事のやりがいについて「強く感じる」は11.4%、「少し感じる」は60.3%で、やりがいを持っているという回答が7割強に上った。「やりがいを強く感じる」と回答した割合を職場別で見ると、訪問看護関係が突出して高かった。
 

現在の最少看護職員数を基準とした診療報酬点数上で反映するシステムや内容(看護師配置数の基準)を変えない限りは「辞めたいと思わない」看護師が増えることは難しい。

なぜ7対1なのか、8対1や9対1、11対1、12対1、14対1はなぜないのか、配置基準が患者の病態に応じたものになっていないことが問題である。つまり重症度・看護必要度のA項目2点以上・B項目3点以上は、A項目が5点であろうと10点であろうと同じ重症度であるという考え方になっているのがおかしい。B項目も同様であり、A項目とB項目を同時に満たさないと重症ではないがB項目が高ければ看護ケアには労力も時間もかかり疲労度も高い。こうした細やかな基準で診療報酬に反映されなければ医労連の調査結果はいつまでも改善されないし「辞めたい看護師」は減少しない。

59

「介護保険と障害総合支援法」に格差

公的介護サービスを受けながら生活している障害者が、65歳になった途端に負担増や給付カットになったりして問題になっている。これは、サービスの提供制度が「障害者総合支援法」から「介護保険」に切り替わるためで、負担増により利用者の生活への影響が大きく、自治体によって対応に差があり不公平感なども問題になっている。            

総合支援法では、両方の制度を利用できる場合は「介護保険優先」と規定されているためで、日本の社会保障制度では、税による福祉制度より保険料の支払いが条件となる保険制度が優先されるためである。そもそも両制度は同一のものでは無く、総合支援法は、障害者の生活と社会参加を支援するために設けられた制度で、自己負担には低所得者への配慮措置があり、利用者の93%は無料である。費用は自己負担分を除けば全額税金で賄われるため、自治体の財政力によってサービス内容にばらつきが出ている。一方、介護保険は高齢になって介護を必要とする場合に備えた支え合いの仕組みで、サービス費の原則1割が自己負担となる。費用は保険料と税金で半分ずつ賄われサービスは全国一律の基準になっている。

■重度訪問介護と訪問介護の違い
57

2013年度の返還金130億円

医療機関の指導・監査(個別指導:4,302件、適時調査2,409件、監査97件)などにより「適正な病院の運用」に関して、病院としての機能や運営に関する届け出を行う際に提出した要件(必要な人材や人数、設備、物品、指標になる統計的なデータ等を満たしているかの調査、適応のない診療報酬の請求など、適用にならない状況下で診療報酬を請求している場合、不正請求(架空請求、付増請求、振替請求、二重請求)となり、その請求額を返還しなければならない。特に悪質な場合には病院の保険指定が取り消され、患者は自費払いとなることからほとんどが受診しなくなる。実質、倒産(破産)に追い込まれることになる。そうした平成2012年度の結果が1月31日、厚生労働省により公表された。その結果、12年度は130億3890万円(前年度比47億4489万円増)の返還につながり、11年度と比べ157.2%の増となった。また保険医療機関などの指定取り消し件数は72件(前年度比27件増)で、指定取り消し( 31件:対前年度比11件増)、指定取消相当(41件:対前年度比16件増)、1970年度以降で3番目に多かった。保険指定を取り消された病院や薬局のうち、既に返還金額が決まっている中で最も高額なのは「豊岡会はまなこ病院」の約19億円で、今年度の返還金額に計上される。

看護師の無断欠勤

職員が事前に何の連絡もなく突然出勤しなくなることがある。看護管理者として何度か経験したことがある。看護師は24時間のシフトを組んで患者へ継続した看護を提供している。事前に連絡があって出勤できないのであれば対処の仕様があるが、何も連絡がなかったり、こちらから連絡を入れても通じない(消息がつかめない)等の場合、何か事件に巻き込まれていないか、病気で倒れていないかなど非常に心配する。また連絡が来るまで少し待ってみようか、家族に連絡をした方がよいかなど対応に困る場合がある。出勤できない場合は、社会人の常識として連絡を入れてほしいところである。何度が住居を尋ねたこともあった。こうした場合は必ず複数人で尋ねる必要がある。

病院は、看護師に関わらず必要最小限の人数しか配置していない。したがって誰もが戦力として期待されている。そうした人が出勤してこないことは病棟や外来・手術室などその看護単位にとっては大きな痛手であり、同僚には大きな負担(迷惑)をかけることになる。休みの人が振替で出勤しなくてはならなくなったり、人員配置の対応ができないと業務を皆がカバーし超過勤務時間が多くなったり、疲労度も大きく、こうした状況が度々起きたり、長期に及ぶなどする場合に同僚から「いないと思っている」とか「むしろ早く辞めてもらった方が期待しないで済む分気が楽だ」などの言葉が聞かれるようになる。

迷惑をかけた看護師にはペナルティを科す。休む場合の申請の仕方の再教育と懲戒処分(訓告~懲戒解雇)についての再教育を行い、同様の事態が起きないことを願う。

懲戒解雇は重い処分である。就業規則に定められていれば退職金の支払いもない。解雇するには正当な理由やその改善に向けた取り組み実態が必要である。所定の様式を用いて所轄の労働基準監督署長に申請し、認定されなければ懲戒解雇はできない。

労働基準監督署長の認定を受けないまま懲戒解雇をするなら、30日前の解雇期間か平均賃金の30日分の解雇代手当、が必要である。または、両方が必用な場合もある。

■懲戒処分の種類と内容
【譴責・戒告】 行為や過失の反省を求めて戒める処分で、①始末書を提出させるものを「譴責」、② 始末書の提出を伴わないものを「戒告」という。

【減給】 賃金から一定額を差し引く処分。減額の割合と減額期間が設定される。

【出勤停止・停職】 一定期間の出勤を停止し、欠勤とする処分。数日程度でのものを「出勤停止」。数週間から数か月となるものを「停職」という。

【降格】 降任等の職務上の地位を下げる処分で、降格による賃金の減額は、降格された 地位による給与変更であるため減給と異なる処分である。

【諭旨解雇】 勧告による自主退職処分。懲戒解雇よりも軽く退職金が減額して支払われる場合が多い。しかし、勧告を断ると懲戒解雇処分として扱われ、退職金が支給されない。

【懲戒解雇】 悪質重大な事案の処分として解雇を行う。退職金の全部、または大幅な減額が伴う。

15年8月から介護保険の2割負担の実施

厚労省は、費用負担を公平にする観点から、1月30日、医療と介護保険制度を一括で見直す「地域医療・介護確保法案」を了承した。介護保険の自己負担割合(現在一律1割)を、「年間合計所得金額160万円、年金収入の場合280万円以上」の所得がある高齢者を対象に2割に引き上げる方針を固めた。政府は近く同法案を閣議決定し、通常国会に提出する。                                       

介護保険の自己負担割合の引き上げ時期に関して厚労省は、当初、2015年4月としていたが、前年の所得情報を把握できる同8月に先送りした。特別養護老人ホーム(特養)など介護施設に入る低所得者に食費と入居費(家賃)を補助する「補足給付」について一定の預貯金のある世帯を給付対象外とする時期も、当初方針の来年4月ではなく来年8月からとする。

■介護保険の導入
介護保険制度は、寝たきり老人や認知症を患った高齢者の増加、介護の長期化と介護の必要性・重要性の高まり、介護者の高齢化(老老介護)の問題、入院治療が不要であるにもかかわらず、病院に長期滞在する「社会的入院」の問題などから、ドイツの介護保険制度をモデルに介護保険制度を設け、福祉と医療の制度を1つにし、介護サービスを提供することとした。      

介護保険料は、導入当初は半年間徴収が凍結され、平成12年(2000年)10月から半額徴収、平成13年(2001年)10月から全額徴収 となり、介護を家族(家庭)だけでなく、社会全体で支えるしくみとなった。

56

認知症の社会的費用を試算

厚生労働省の研究班は、認知症の人の医療・介護費と家族の介護負担の総額が、社会全体でどれぐらいになるのか、「社会的費用」を推計するための調査に着手する。2014年度末までに試算を行い、今後どの程度の財源が必要になるかの検証や、費用の効率化、介護の負担軽減などの政策づくりにつなげることにしている。                 

社会的費用は、医療・介護費などの直接費用と、家族による無償ケアの間接費用を合計して算出する。医療・介護費は、国の患者調査や介護保険の給付費実態調査などのデータを活用できるが、家族によるケアの状況を表すデータはない。そのため、2月以降に、全国約1,000人の介護家族らの協力を得て、見守りや食事、トイレの介助など、介護にかかった時間や内容を1週間記録してもらう調査を行う。介護にかかった時間に、介護労働者の標準的な賃金を掛けて、無償のケアの費用を試算する。これまでのデータで、医療費は数千億円、介護費は6兆~7兆円と見られ、家族介護などの費用を既に算出している英国並みと仮定すると、全体で10兆円を超すと見られる。認知症者数は、厚生労働省が去年発表した305万人。今年の調査では、本人との面接に加えて医師の診断を行うなどし、精度を高めたものになっている。その推計が今年発表され、高齢者4,362万人、去年(2012年)は3.079万人。今回の調査では、65歳以上の高齢者の15%が認知症で、12年度は462万人となる。60~74歳で認知症になる方は10%以内であるが、85歳以上になると40%以上の人が認知症と診断され、ほとんどの年代で女性の方が高かった。

55