月別アーカイブ: 2014年5月

民間病院の非稼働病床を知事が削減命令できる体制を

日本における医療供給体制は病床数によって決められている。病院の病床数(一般・精神・結核・感染・療養)は、平成4年(1,686,696床)までは増加し、以後徐々に減少して平成23年10月1日現在で10万床が減少した。

都道府県が医療計画を策定する上で、病床数は重要な意味を持つ。医療計画によって策定される医療圏ごとに、その地域の病床数(基準病床数)を策定し、この「基準病床数」によってその地域にどれだけの医療従事者が必要であるか等が決められる。

これによって病床過剰地域には新規の病院の開設や増床を制限することができる。しかし診療所の病床は、療養病床を除き、医療計画に含まれず規制の対象にはならない。

10月21日、規制改革会議の「健康・医療ワーキング・グループ」は、医療提供体制に関連する規制緩和の論点を11月に取りまとめる予定にしている。

その中で、民間の医療機関が与えられている許可病床のうち、実際には入院を受け入れていない「非稼働病床」を削減するよう、都道府県知事が命令できるようにしたり、病床が過剰な医療圏をまたいで医療法人が合併する際、地域の病床数の上限である「基準病床数」を柔軟に運用したりすることを求めることにしている。

都道府県知事は現在でも、病床過剰地域にある公的な医療機関が正当な理由なしに入院を受け入れていなければ、病床の削減を命令できることになっている。

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中国の新生児連続誘拐、舞台は病院

中国北西部の陝西(せんせい)省富平県の公営病院で、新生児が売り飛ばされる事件があり、地元の警察当局は、事件に関与した産婦人科の女医(56)を誘拐や人身売買の容疑で逮捕した。

9日までに十数人の新生児の親が被害を訴え出ており、当局は相当数の余罪があるとみて、裏付け捜査を進め26件に関与しているとみられる。

中国では乳児や子供の誘拐・人身売買が後を絶たないが、今回は医師が犯行に直接関与していたことで衝撃が広がっている。

一人2万1600元(約34万円)で売却した疑いがある。

男児は繰り返し転売され、最終的に6万元(約94万5000円)で売られていた。

中国メディアによると、逮捕された医師は7月16日、出産直後の女性(23)に対し「赤ちゃん(男児)は母体から伝染病を感染し、人と接触することも教育を受けることも不可能。

先天的な病気もあり、治療を施しても3歳までしか生きられない。

育てるのは親にとっても国にとっても大変な負担となるので、“死産”として処理した方がいい」などと偽り、治療を諦めて自分に処置を任せるよう説得した。

日本では、2006年1月仙台市の光ケ丘スペルマン病院から、会社員山田斉(27)さんの生後間もない長男柊羽(しゅう)ちゃんが男に連れ去られる身代金目当ての事件が発生した。

日本でもこうした新生児が連れ去られる事件がときどき発生している。

その都度、新生児室に通じる通路の施錠の徹底や防犯カメラの設置などの対策が講じられるが日々の対策を徹底することが重要である。

「○○は忘れたころにやってくる。」そうだから、看護師の皆さんには十分に気をつけて赤ちゃんを守っていただきたい。

他国のこととは言っていられない。

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患者にやさしい痛みの少ない注射針

人間が蚊に刺されてもほとんど痛みを感じないのは、生化学的には蚊の唾液の麻酔効果、機械的には蚊の口器が極小であり皮膚の痛点を避けやすいことが挙げられるが、その正確なメカニズムは未だ解明されていない。

その蚊の針にヒントを得て、10年間の研究・開発の末、2012年3月に世界初の樹脂製採血針「ピンニックスライト」(痛くない針)を開発した兵庫県西宮市の株式会社ライトニックスが大きな注目を浴び、半年でおよそ5万個を出荷している。

ピンニックスライトの最大の特徴は、「痛くない」ということ。

「蚊に刺されても痛くない」ということに着目した福田社長は、蚊の針に細かいギザギザが付いていることに気付き、その形状を再現した。

細かいギザギザが付いていると、刺した時に細胞に触れる面積が少なく、細胞をあまり傷付けないので、痛みが少ないという。

その「蚊」の先端部分にあるギザギザの形状を注射針に施した。

現在、主に糖尿病患者の方が採血時に使用する針として、大きな注目を集めている。

その特徴は、①“世界初の樹脂製採血針”である。

これまで手術用の糸や骨の接合剤として使われていたこともあり、人体にとって安全な“デンプン由来の樹脂”を材料にしている。

②廃棄の際、金属の針は、医療廃棄物として処理されていて運搬時や廃棄後に触れた人に刺さり、ウイルス等の二次感染を起こすという問題が回避される。

③ピンニックスライトは、国内の多くの地域で家庭ゴミとして処理することができ、廃棄物のコストが発生しない。

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ピンニックスライト針の構造
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ピンニックスライト針(先端突起部のみ)
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鉛中毒で年14万人超が世界で死亡

世界保健機関(WHO)は18日、玩具や壁の塗料、顔料、車用バッテリー(鉛蓄電池)、放射線吸収剤、有鉛ガソリン(航空機用など)、散弾などに使われる鉛の中毒で毎年約14万3000人が世界で死亡し、知能障害になる子供が約60万人に上るとの推計を公表した。

子供が中毒になる主な原因は、家具や玩具に使われる塗料の摂取で、子供の中毒例の99%が中・低所得国で起きている。

鉛の体内摂取を防ぐため、玩具や住宅、家具などに使われる鉛を含む塗料の生産・使用の早期廃止など、各国が規制強化に取り組むことを呼び掛けている。

鉛に汚染された土壌で育った植物、それを食べた草食動物の肉や魚を食べた場合も発生する。

鉛はヘモグロビン合成を阻害するために血液塗抹標本上では有核赤血球、好塩基性斑点が認められる。

急性中毒では嘔吐、腹痛、ショックなどを示し、慢性中毒では主に消化器症状、神経症状、一部では貧血が認められる。

肉眼的所見として脳水腫、大脳皮質の軟化、組織学的所見として脳回頂部における海綿状変化、血管内皮細胞腫大、星状膠細胞腫大、虚血性神経細胞死が確認される。

肝細胞、尿細管上皮細胞、破骨細胞の核内に好酸性封入体が認められることがある。

治療は、キレーション療法(キレート剤を点滴して行う解毒治療)は、第一次世界大戦時に毒ガスの被害を受けた兵士に対して行われ、鉛中毒に対しても効果があると認められたが、体内から有害なミネラルや老廃物を取り除くデトックス(detoxificationの「解毒」の短縮形:体内から毒素や老廃物を減少・除去する)が行われる。

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特定看護師の進捗状況

特定看護師が医師の包括的な指示の下、自身の判断で直接動脈穿刺による採血や経口・経鼻気管挿管の実施などの難しい医療行為ができる「特定看護師」の制度案を10月17日、厚生労働省の検討会がまとめた。

検討会は、特定看護師が行う高度な知識や技能が必要な「特定行為」として、気管挿管や抗不安薬の投与などの41種類を選定し、14分野に分けて、それぞれの分野ごとに、厚労省が指定した研修機関で研修を受ければ、あらかじめ医師が指示した手順に従い、患者の容体を自身で判断しながらその分野の特定行為を行えるとしている。

厚生労働省は、来年の通常国会に保健師助産師看護師法改正案を提出し、早ければ2015年度からこの制度を施行する。

一般の看護師も医師の具体的な指示があれば診療の補助における看護師の特定行為について同じ行為が行える。

ただし、その場合は、医療安全の観点から、保健師助産師看護師法上の努力義務として、研修を受けることが必要であり、各医療機関で実施される研修に関しては、一定の質が担保されるよう厚労省が指針を策定すべきとした。

制度案は10月29日開催の「チーム医療推進会議」に報告される。

社会保障制度改革プログラム法案

政府は10月15日の閣議で、社会保障制度改革の全体像を示したプログラム法案(高齢化の進展に対応した医療提供体制の改革を2017年度までに実施することなどを明示した法案)を決定し、同日召集の臨時国会での成立を目指すことにしている。

主なプログラム法案の医療に関する内容では2014~17年度に、①国民健康保険の運営を市町村から都道府県に移管する、②高額療養費制度の見直し、③来春に予定する70~74歳の医療費の自己負担を、これまでの特例の1割から2割に引き上げる(いま軽減措置の対象になっている人は対象とせず、「新70歳」のみを2割負担の対象にする)など、を実施するとしている。

介護保険改革では、15年度に向け、①要介護度の低い「要支援」向けサービスの市町村事業へ移管する、②所得が一定以上の利用者の自己負担を引き上げる、③夫婦での年収360万円程度で線引きをし、それ以上なら一律1割の自己負担割合を2割に上げることなど、を盛り込んでいる。

また、国民会議の後継組織と位置づける、有識者による「社会保障制度改革推進会議」を設置し、中長期的な改革を議論して首相に提言することにしている。

先のブログで記載した国民医療費の抑制や特養のあり方、高齢社会に向けた医療・介護のあり方がより具体的に検討されることになる。

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自殺者の減少

日本の人口10万人あたりの自殺者は、世界第5位(23.8人)で、1位は韓国(33.5人)、2位:リトアニア(31.5人)、3位:カザフスタン(26.9人)、4位:ベラルーシ(25.3人)である。

日本の総自殺者数の推移は、右図の通りである。2008年以降減少に転じ、本年も例年より2,000人ほど少なく推移している。ちなみにエジプト、ホンジュラス、ヨルダン、セントクリストファー・ネイビス、アンティグア・バーブーダ、ハイチは「0人」である。

日本が減少に転じたのは、国立精神・神経医療研究センター(東京)などの研究チームが2006年7月から3年半にわたり、自殺による年間死亡率が人口10万人当たり30人以上と高い5県(青森、秋田、岩手、宮崎、鹿児島)の8自治体で自殺対策プログラムを実施し、自殺発生率(自殺による死亡と自殺未遂による入院を合わせた発生数)が近接地域と比べて男性と高齢者で20%以上減ったとする研究結果をまとめた。

実施した自殺対策プログラムは、①イベントでの普及啓発、②健診などを活用した自殺リスクが高い人の把握とフォロー、③自殺者遺族の支援、④精神疾患がある人への訪問、相談などを組み合わせたもので、計約80項目である。

自殺発生率の変化は8自治体合計で算出してあり、3年半の平均を地域の人口減少率なども加味して統計的に解析した結果、近接自治体の自殺発生率に対し、プログラム実施自治体では男性で約23%、65歳以上の高齢者で約24%減少した。

5年間平均の月別では5月(2,896人)がもっとも自殺者が多く、次いで3月(2,810人)、3番めが6月(2,751人)となっている。春先から初夏に多く、初冬から春先までは低い。

自殺には季節のサイクルもあるようだ。

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赤ちゃんの股関節脱臼調査へ

脚を締め付けずにおむつをしたり、脚をM字に開いて正面から抱いたりするなど、日常的な工夫で赤ちゃんの股関節脱臼(特別な外傷がないのに股関節がはずれてしまう)を回避できる啓蒙活動の効果や少子化で、赤ちゃんの股関節脱臼の患者数は、25年前の赤ちゃんの1%に見受けられたのに対して10分の1(1,000人中1~3人)まで激減した。

しかし、日本小児整形外科学会によると、患者減少で知識のある医師や保健師が減ったため、0歳児の定期健診で見つからず、歩き始めてようやく異常に気づく例が報告されるようになってきている。

生後3か月程度で治療をすれば治りが早いが、1歳を過ぎてからでは関節が外れたまま成長が進み、治りにくくなる。

先天性股関節脱臼は女の子に多く、生まれつき関節がはずれやすく、妊娠中に子宮の中で膝(ひざ)を伸ばした姿勢でいた、いわゆる逆子(さかご:骨盤位分娩)の赤ちゃんに多くみられる。生まれつき関節がゆるくて(関節弛緩)、不安定な股関節をもっている赤ちゃんで、出産直後からの不適当な育児環境が加わることによって、脱臼がおこることが知られている。

生まれて1週間以内の赤ちゃんに股関節脱臼があると、股を大きく外に開いたときに、コクッという音がする。(クリックサイン)。

また、生後1か月以後の赤ちゃんでは、股関節の開き方が悪い(開排制限)、脚の長さがちがう、太ももの内側のしわが左右対称でない、脚の動きがふつうとちがうなどの症状がある場合、股関節脱臼を疑う。

赤ちゃんが歩き始めると、脚を引きずって歩いたり(跛行)、お尻を突き出して歩いたりする。

「先天性股関節脱臼」の診断が遅れて治りにくくなった患者が目立つことから、日本小児整形外科学会が実態調査を行うことにしている。

また、早期診断を徹底するため、専門家が作成した統一のチェックリストを3か月健診で導入するよう呼びかけている。

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一酸化炭素中毒

一酸化炭素(CO:無色、無臭、空気よりわずかに軽いガス)中毒は、火災や屋内での炭火、練炭、燃料用ガス、石油、湯沸かし器やストーブの不完全燃焼、車の排気ガスなどによって発生し、吸引すると体内に酸素を運ぶヘモグロビンと強力に結合(酸素の250倍の結合力)し、体内が酸素不足(低酸素症)になることで、頭痛、昏睡、失神、意識喪失を引き起こし、呼吸停止に陥る。わが国でのCO中毒による死亡者は年間約2,000人でその大部分は火災によるものである。

一酸化炭素中毒か否かの検査は、血液中の一酸化炭素濃度を測定して診断する。     

CO中毒の重症度は吸入した空気中のCO濃度、それに暴露していた時間 [CO濃度 (ppm) × 暴露時間 (時間) ]により左右され、軽度:300-600、中等~高度:600-900、致死的:1,500とされる。

大気汚染の環境基準では「1日平均値が10ppm以下かつ8時間平均値が20ppm以下であること」とされ、労働安全衛生法では事務所室内のCO濃度は50ppm以下と定められている。

CO-Hb(ヘモグロビンに結合した一酸化炭素)の消失半減期は、大気圧室内空気で4-6時間、100%酸素の吸入で40-80分、高圧酸素療法で15-30分とされ、通常、高濃度酸素治療を6時間以上行う。

軽度の一酸化炭素中毒では、新鮮な空気を吸うことで回復することが多い。

しかし、重症の場合はフェースマスクを使った高濃度の酸素吸入や人工呼吸を行い、血液中の一酸化炭素を消滅させ、症状を緩和する。場合によっては高圧酸素療法を行うことがある。

高圧酸素療法器
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火の気がなくても出火する

10月11日午前2時20分ごろ、福岡市博多区住吉の「安部整形外科(有床診療所:19床)が全焼し、入院患者8人、病院関係者の男女2人の計10人が死亡した(10月11日12時現在)。

火災は、一年間におよそ5万件も発生し、1,700~2,000人が亡くなっている。

平成23年の全国の病院火災は、126件(全体の0.5%)発生している。

全負傷者数7,286人のうち、病院での負傷者は27人(0.4%)である。

火災原因の2割弱は電気火災で、電気火災中トラッキング火災(コンセントに長期間の電源プラグを差込んでいると、そこに埃がたまり、適度な湿度が加わると刃と刃の間に電気経路ができ、電流が流れて発火し火災になる:図)は、約8%発生している。

火気を使用していなくても、病院では多くの電動の医療器械があり、その電気系統の整備を怠ると下記のような電気火災が発生する。普段の安全対策が必要となる、

◆ 接続部分の緩みにより過熱して出火する火災

防止対策: プラグを差し込んだ時、差し込みが緩いコンセントやテーブルタップは交換する。

◆ 配線がショート(短絡)して出火する火災

防止対策: コードの上に家具などを置かない。

◆ トラッキングによる火災

防止対策: 定期的に差込みプラグを抜いて、ほこりを掃除する。

◆ 絶縁劣化により発熱して出火する火災

防止対策:長年使用している電気製品等は日常的に点検し、異常があれば使用を中止し、専門業者等に点検、修理を依頼する。

◆ 断線状態(半断線)により発熱して出火する火災
防止対策:差し込みプラグを抜く時は、コード部分を持って引っ張らない。

ちなみに全国で火災の多い都道府県(人口10万対)は、①高知県(54.3件)、②鹿児島県(53.7件)、③宮崎県(51.3件)、④茨城県(51.1件)、⑤島根県(48件)で、少ない都道府県は、①富山県(20.7件)、②京都府(22.2件)、③福井県(28.7件)、④石川県(29.5件)、⑤神奈川県(30.8件)である。

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