月別アーカイブ: 2014年3月

濃厚赤血球1単位でHb(ヘモグロビン)はどれぐらい増える?

赤血球製剤を輸血する基準は、①急性出血により、Hb が6g/dl以下になった時、②血液疾患に伴う貧血で、Hb が7g/dl未満で、鉄剤、ビタミンB12、葉酸、エリスロポエチンなどの投与によって改善されない時、③慢性出血性貧血で、Hb が6g/dl以下になった時、④手術中に循環血液量に対する出血量の割合が20%以上になったとき、が輸血の適応となる。

通常はHbが7~8g/dl程度あれば十分な酸素の供給が可能であるが、冠動脈疾患などの心疾患あるいは肺機能障害や脳循環障害のある患者では、Hb値を10g/dl程度に維持することが推奨されている。

輸血をした場合にどれぐらいの改善が期待できるのかを以下の数式で算出し、血液検査の実際のデータと比較し止血しているのか出血が継続しているのかが判断できる。

Hbの正常値は、男性:13.0~16.6g/dl、女性:11.4~14.6g/dlである。

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予測Hb増加量=投与Hb量(g)÷循環血液量(ml)×100    

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※1単位のHb量:30g

【Q】たとえば体重40kgの女性が重度の貧血(赤血球:250万個/μℓ、Hb:5g/dl)で運ばれてきて、濃厚赤血球2単位が輸血された。Hbはどれぐらい増えると期待できるか。

【A】(30×2)÷(40/13×1000×100)=60÷3077×100≒1.95  ※1.95g/dl増加する

医療における水銀のゆくえ

水銀は、常温、常圧で凝固しない唯一の金属元素で、銀のような白い光沢を放つことからこの名がついている。

体温計に使われている水銀は金属水銀なので安全だと言われている。

金属水銀は間違って飲み込んだとしても、消化管からはほとんど吸収されないので、急性中毒を起こすことはない(ただし、一部が腸内細菌叢により酸化されたり、有機水銀に転換されて吸収される余地が示唆されている)。

しかし、気化した場合には肺から吸収されやすく、体内に吸収された場合にはヘモグロビンや血清アルブミンと結合し毒性を示す。

このため水銀を含有する物(蛍光灯・体温計・血圧計、朱肉など)を焼却することは危険である。

2010年、スウェーデンで開かれた水銀規制条約をめぐる国連の第1回政府間交渉委員会に、世界保健機関(WHO)が各国で使われている水銀を含む医療機器などに関し、段階的な廃止が望ましいとする見解を文書で示した。

 対象は歯科用アマルガム、水銀体温計、同血圧計など。このうちアマルガムは水銀(45~55%)と銀、銅、スズなどの合金。

各国NGOは「有害」として、政府間交渉委では条約化で即時禁止を求めた。

WHOは「アマルガムは耐久性に優れ、価格も安く、一般的に患者には金属への拒絶反応がある人を除き、安全と考える」と報告。

半面「取り扱いをめぐり十分な労働環境がなければ、医療従事者の健康には悪影響を及ぼす」とし、「狭い空間での不適正な扱いや未処理の廃棄・排出を避け、適切なリサイクルが必要」とした。

各国が使い続ければ火葬の際に大気中に排出され、大気を汚染し続けると指摘。

「ただ、裕福な国では代替物質が使えるが、途上国では使わざるを得ない」とし、使用終息を求めている。

 水銀体温計は破損などで患者や医療従事者に有害として使用の禁止、血圧計も段階的に廃止。

太陽電池製品や電子機器に切り替え、適正廃棄・回収が不可欠とした。水銀体温計のほとんどが姿を消し電子体温計に切り替わってきた。

基礎体温計
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水銀血圧計
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日本における看護師への道

日本で看護師になるには以下の7コースがあり、コースの多さからいかに看護師が不足してきているかが読み取れる。

しかし、「看護師」という同じ資格を取得するのにこんなに多岐な方法があるのは不思議である。

またいまだに中学卒業で准看護師学校を受験できるのも、高校卒業や一般大学を出た社会人入学生が増える中では時代にはそぐわない。

かたや大卒、かたや中卒の多岐の学歴で資格取得が可能になれることが看護師の地位を低くしていると言われている。

少子化もあってますます大学志向が高まる中でこれらのコースには少しずつ変化が出てきた。

日医が全国の医師会立の353校を対象に行った助産師・看護師・准看護師学校養成所調査によると、2008年度に215校あった准看護師課程の学校数は、今年度には193校に減少し、11年度まで増加傾向にあった応募者も昨年度から減少に転じ、今年度は昨年度比約2000人減の2万5348人。

入学者数も227人減の9166人となっている。

一方、看護師3年課程は、学校数が増えたことに伴い、ここ数年は応募・入学者の増加傾向が続き、今年度の入学者は昨年度比42人増の3214人。

応募者は08年度に比べて約2倍の1万3966人となった。

【看護師になる道】
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氷枕の空気はなぜ抜くの?

今夏のように熱帯夜(夜の気温が摂氏25℃を下回らない)が続くと、発熱をしていなくても氷枕を用いて快適な眠りにつきたいものだ。

現在は「涼」をとる便利なものがたくさんある。

外部環境を変化させて「涼」をとる扇風機(対流の発生)やクーラー(外気温の冷却)、直接、体(体温)を冷やす「冷却シート」や、布を濡らして頭や首に巻く「ウォーター・クール・ベルト」などもある。

病院では、発熱時に用いる氷枕であるが、氷枕を作るとき、氷を入れ、水を注ぎ、ストッパーをかける前に氷枕内の空気を抜いて作成する。

その理由には以下の2点がある。一つは「空気は水や氷より軽いために空気を抜かないと枕の上部に空気の層ができ、体を冷やすはずの接着面の冷却効果が上がらない。

もう一つは、氷が融けると氷中の空気が出てきて膨張力が増して氷枕が膨らみ、固くなって接着面の反発力が大きく不快であったり、接地面が不安定となるために行う。

一つ一つの看護行為には必ずそのエビデンスがある。

何の理由や根拠もなく行っている看護ケアはない。

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夏バテ

夏バテは、暑さによる自律神経系の調節が乱れ、それに起因して様々な症状が現れる状態をいう。

人間の体は、体温を一定に保とうとする(ホメオスターシス:恒常性)働きがある。

高温・多湿の夏場では、自律神経の働きにより汗をかいたり、血管を広げたりして体温を逃がそうとする(放散)。

こうした状況はエネルギーを消費し、自律神経にかなりの負担がかかる。

通常は負担に耐えることができるが、負担が強い場合や、長引いたりすると体に溜まった熱を外に出すことが出来なくなる。

エネルギーの消耗による体力低下・全身倦怠感、体熱の上昇による食欲不振・思考力低下、食物の不消化による下痢、水分不足による便秘などいわゆる「夏やせ」と呼ばれる症状が出現する。

近年は、冷房環境下と外気温の急激な変化により自律神経のバランスを崩してしまうことが多い。

不快によるストレスや冷房による冷え、睡眠不足なども原因となる。

「夏バテ」という名称から夏のみの病気であると思われがちだが、気候の変化が激しい梅雨や初夏にも起こる。

夏バテの予防には十分な休養と栄養補給を行い体を休めることが大切である。

ビタミンやタンパク質の不足も夏バテを招くため、食事は豚肉や大豆・魚、野菜など色々な食品をバランスよく摂り、冷えを増長する冷たいものは控えて暖かいお茶などを飲むようにすると効果的である。

特に水分補給が重要で、夏場は軽い作業でも1日2~3ℓの汗をかくため、意識的に水分を取るようする。

冷房を入れる際は、室温と外気の差を5℃以内にし負担をかけないようにする。

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注射薬の必要量の求め方

注射薬処方箋には、注射薬名、投与量、投与時刻、投与回数、投与時間間隔、投与方法(静脈・筋肉・皮下・皮内)などが記載される。

この中で間違いやすいのが投与量である。

1A(アンプル)/回、1V(バイアル)/回などの指示は分かりやすいが、投与量○○mg/回などの指示は、薬液瓶やアンプルの全量投与でないかぎりは、投与量を計算しなければならない。

薬液に溶けている溶質(薬効成分)と溶質が溶け込んでいる溶媒の量により投与量を決定することになる。

たとえば、2mℓに5mgの薬量が含まれている注射薬を3mg皮下注射するように指示が出たとする。

何mℓを注射器(シリンジ)に吸引して投与すればよいかを以下の計算式で求める。

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●求める注射液の必要量=(薬液の量mℓ×指示量mg)/全溶液量mg

先の注射の指示にあてはめると、X=(2×3)÷ 5=1.2となり、1.2mℓをシリンジで吸引し、皮下に投与することになる。

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式の考え方は、2mℓに5mgが溶解している中から3mg投与するのであるから、2:5=X:3となる。5X=6だから、x=6/5となる。

インシデントやアクシデントでは、過量投与や過少投与の原因となる。

慎重に間違いのないように準備をしなければ微量で生命に関わる薬品もある。

入院基本料7対1の次年度のゆくえ

入院基本料7対1は、平成18年度より導入され今日に至っている。

現在平成26年度の診療報酬改定に向けた取り組みの中でその在り方が検討されている。

実際に看護管理者として勤務をしていて包括的な承認のあり方には矛盾を感じていた。

一つ目は、病棟によっては平均在院日数(19日以内)が基準を満たしていなくても対象病棟全体で満たしていれば承認されるということ、二つ目は、重症度・看護必要度の基準(A項目2点以上。

B項目3点以上を満たす)の割合(15%以上)が病棟によっては満たしていなくても対象病棟全体で基準を満たしていれば承認されること、看護師の夜勤時間が月あたり72時間以内であることについても、看護師個々でみたり病棟単位でみると満たしていなくても対象病棟の看護師全体で満たせていれば承認されること、ほかにも看護師がベッドサイドにいない時間(委員会や会議、研修会、申し送りなど)は、配置人員から減じることになっているがどれほど正確に積算されているか疑問である。

厚生労働省保険局の宇都宮啓医療課長が、社会保障審議会医療部会の会合で、来年度の診療報酬改定に向けて一般病棟7対1入院基本料の算定要件の厳格化を打ち出している。

現在、多くの病院で次年度の看護師採用に向けて取り組んでいる時期である。

次年度の診療報酬改定がどう展開していくのか今後の動向を注視しておかないと、採用(人件費の増加)したものの7対1入院基本料が承認されない場合、病院は大赤字となって破綻する。

看護師一人あたりの年間平均給与が400~450万円といわれる。

何十人がオーバー採用になるかで大きな額となる。

また入院基本料7対1の厳格化によって、現在の7対1の算定病院がランクを下げることを想定して、そこに勤務する看護師を在宅医療にシフトさせる考えとのことであるが、多くの看護師は、急性期一般医療を希望しており、この考えは見込めない。

急性期医療対象病院は、看護師の応募が殺到し、採用の熾烈な競争がはじまる。

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看護師4人が結核発病

昨年9月から咳をしていた20歳代の国立病院機構千葉医療センタ-の女性看護師から6月10日に結核菌を検出し、発病していたことが判明した。

看護師と関わりのある医師や看護師など54名を検査したところ13名が感染し、そのうち20歳代の女性看護師3人が結核を発病していた。

昨年9月から結核の症状があった女性看護師の勤務する病棟で接触した入院患者と発病した3人の看護師と接触のあった入院患者692人に対しても「結核の感染検査を行う」としている。

近年、結核に精通する専門医が少ないこともあって、結核感染の判断が遅いことやこの看護師のように「マイコプラズマ肺炎」との診断(誤診)・治療により対応が遅れ、感染が拡大することが多い。 

結核菌は、グラム陽性菌(グラム染色により紺青色あるいは紫色に染色される細菌で、外膜を持たない、厚い細胞壁ペプチドグリカン層があることが特徴)で、酸素を好み(好気性)、細胞の形状が細長い棒状または円筒状(桿菌)であり、長さ(1~4ミクロン:0.001~0.004mm)、幅(0.3~0.6ミクロン:0.0003-0.0006mm)で、細胞の分裂時間が10~15時間(大腸菌:20分)のため増殖が遅く、感染をして発病まで6ヶ月以上かかる。

結核菌は世界中に分布し毎年300万人が死亡している。

微熱や咳・痰などの風邪症状が2週間以上継続する場合は「結核」を疑って対応する。

空気を介して感染が拡大するのでマスクの着用、手荒い、病室の換気は必須となる。医療従事者が自分の身を守れなければ患者を守ることはできない。

結核菌
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ヘルパンギーナの感染増

国立感染症研究所感染症疫学センターによるヘルパンギーナ(エンテロウイルス群の中のコフサッキーウイルスA群やB群・エコウイルス・エンテロウイルス68型~72型による感染)の状況が、7月15―21日の週は全国約3000か所の小児科定点医療機関当たり2.84人で、11週前の約57倍となっている。

都道府県別では高知(5.87人)が最多で、以下は山形(5.37人)、岡山(4.89人)、群馬(4.68人)、石川(4.59人)、滋賀(4.44人)、徳島(4.43人)、大阪(4.37人)、東京(4.11人)などの順となっている。

東京(町田市:13.13人、荒川区:9.25人、南多摩:7.11人、多摩府中:6.1人)や神奈川(横須賀市:定点医療機関当たり7.2人や裾野、鎌倉の保健福祉事務所管内)で警報レベルに達している。

また埼玉(朝霞保健所管内が2週連続で警報基準値を超えたほか、さいたま市の患者数は前週に比べ1.6倍の4.19人に急増した)など一部の地域でヘルパンギーナの警報基準値(定点医療機関当たり6人)を超過している。

他の自治体でも患者数が増加傾向にある。

ヘルパンギーナは、主に乳幼児や子供を対象として発症しやすいウイルス感染症で、毎年6月下旬あたりから8月中にかけて流行する俗にいう「夏かぜ」と呼ばれる疾患である。2~7日の潜伏期間後、38度以上の発熱や口腔内に水疱が現れる。

2~4日で熱が下がり、7日程度で治癒する。高熱や口腔内の痛みで、食事や水分を十分に取れず、脱水になるほか、熱性けいれんや髄膜炎、心筋炎といった合併症を生じる可能性もある。

患者のせきや、つばなどに含まれるウイルスによって感染する。

「急激な高熱」と「口内炎や水泡」、「咽や口蓋垂の炎症症状」はヘルパンギーナの代表的な3症状である。

予防としては、患者との密接な接触を避ける、手洗いやうがい、マスクを着用する。

■主症状
 1.発熱(38度以上、時には39度~40度近い高熱を発症する)
 2.口内の口内炎・水泡や水泡が破れた後のただれ
 3.喉・口蓋垂の炎症症状
 4.高熱による倦怠感・関節の痛み、

ディオバンの治験データ改ざん

東京慈恵医大と京都府立医大のノバルディスファーマのディオバンの治験データ改ざんは、「数ある降圧剤の中で、ディオバンと既存薬のどちらが患者に有益かを調べたもの」で、いずれもディオバンを使えば、血圧値の抑制のほか、脳卒中や狭心症も減らせるとメリットを強調する結果だった。

慈恵医大の研究は高血圧治療にディオバンを加えることで、脳卒中や狭心症が39%減り、京都府立医大の研究では、45%減るとなっていた。

京都府立医大の論文では、カルテに記載がなかった脳卒中や狭心症の病気が論文データでは存在するなど、発症数の不一致が34件あった。

慈恵医大では、ディオバンの有効性を導くための基礎的なデータとなる患者の血圧値について、大学の保有データと論文に使われた671人分のデータに86件(12.8%)の不一致がみられた。

ディオバンに有利な結果が出るように操作されていた。

研究に参加した医師が大学保有データ以外を書き換えることは不可能なことから、ノバルディスファーマの元社員がデータを意図的に改ざんしたと結論づけた。

そもそも治験(ちけん)は、医薬品もしくは医療機器の製造販売の厚生労働大臣の承認を受けるために申請時に必要な資料(臨床試験)を得るために、動物を使用した非臨床試験(前臨床試験)により薬の候補物質もしくは医療機器の安全性および有効性を検討し、安全で有効な医薬品もしくは医療機器となりうることが期待される場合に行われ、第I相から第IV相までの4段階で行われる。

第I相試験(フェーズ I)は、志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討する。

第Ⅱ相試験(フェーズⅡ)は、第I相の結果をうけて、比較的軽度な少数例の患者を対象に、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う試験である。第Ⅲ相試験(フェーズⅢ)は、実際にその化合物を使用するであろう患者を対象に、有効性の検証や安全性の検討を主な目的として、より大きな規模で行われる。

それまでに検討された有効性を証明するのが主な目的であるため、ランダム化や盲検化などの試験デザインが採用される。

数百例以上の規模になることもあるため、多施設共同で行う場合が多い。

第I相から第Ⅲ相までの試験成績をまとめ、医薬品の製造販売承認申請を行い規制当局(医薬品医療機器総合機構)による審査を受けて承認されると医薬品としての販売が可能となる。

第IV相試験(フェーズ IV)は、製造販売後臨床試験と呼ばれ、実際に市販した後に広く使用されることにより、第Ⅲ相まででは検出できなかった予期せぬ有害事象や副作用を検出するのが主な目的で、市販後調査によって行われる。

治験結果が改ざんされれば、薬の効果(病気の治療効果)や安全性(副作用)を左右する甚大な問題となる。

製薬会社の信頼が大きく揺らいでいる。