医療現場において、アクシデント(医療過誤)やインシデント(重大な事故に至らずに済んだ出来事)が発生するとき、そこには様々な原因が潜んでいる。
原因の追究にあたっては、ハインリッヒの法則(1件の重傷以上の重大事故があれば、その背後に29件の軽度の事故があり、300件のインシデントが潜んでいる)を基に事例を分析し、予防に向けた注意喚起を行ってインシデント件数を減らすことで重大な事故にならないように医療安全管理者・担当者が活動している。
そうしたインシデントやアクシデントの原因は、大きく2つに分けられる。一つは患者が原因で起きる場合で二つ目は医療者が原因で起きる場合である。
たとえば、転倒の可能性があり、患者に「一人で歩行をしないで看護師に声をかけるように」と伝えると、「はい。」と答えるが実際には声をかけずに一人で歩いて転倒してしまうことがある。
転倒による害がなければインシデントであるが、外傷性のくも膜下出血を発症したり骨折をするとアクシデントとなる。
こうした場合の原因は患者にあるのか、看護師にあるのかということになるが、この場合は、「転倒の可能性がある」と予見していることから原因は看護師にある。看護師側からすれば、看護師を呼ぶように伝え、患者は「はい。」と答え、同意していたと反論できそうであるが、そのことを患者がどれぐらい認識できていたかどうか、その理解度については確認できていない。
高齢者では、耳が遠くてよく聞こえていなくても「はい。」という人は少なくない。
また入院後しばらくして環境の違いや治療などの不安から認知症症状を発症することも多く、そうした情報(特徴)を踏まえた対応がどうなされていたのかが問われることになり、残念ながら看護師の不可抗力とはならない。
過失(注意義務違反:危険の事実を予見する義務と結果の発生を回避する義務)となる可能性は高い。
なぜなら、危険な事態が発生する予見ができていても、「結果の発生を回避する義務」の「対応の適切性」が問われる事案となる。
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◆長谷川式認知症簡易スケール (20点以下は認知症)
1.お歳はいくつですか?
⇒2年までの誤差は正解
2.今日は何年の何月何日ですか? 何曜日ですか?
⇒年月日、曜日が正解でそれぞれ1点ずつ
3.私たちがいまいるところはどこですか?
⇒自発的にでれば2点、5秒おいて 家ですか? 病院ですか? 施設ですか? の中から正しい選択をすれば1点
4.これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。
⇒系列のいずれか1つで行う:1:a)桜 b)猫 c)電車 2:a)梅 b)犬 c)自動車
5.100から7を順番に引いてください。
⇒100-7は?、それからまた7を引くと? と質問する。最初の答えが不正解の場合、打ち切る
6.私がこれから言う数字を逆から言ってください。
⇒6-8-2、3-5-2-9を逆に言ってもらう、3桁逆唱に失敗したら、打ち切る
7.先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。
⇒自発的に回答があれば各2点、もし回答がない場合は、以下のヒントを与え正解であれば1点
a)植物 b)動物 c)乗り物
8.これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。
⇒時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの
9.知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。
⇒途中で詰まり、約10秒間待ってもでない場合にはそこで打ち切る
0~5=0点、6=1点、7=2点、8=3点、9=4点、10=5点